第一章
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うっかり失言
宮部涼真は一八五と長身でまだ幼さが残るが爽やかな顔立ちである、眉は薄めで奥二重の優しげな目が印象的だ。黒髪を会社員らしく右で分けている。
まだ大学を卒業して入社して二年目だが結婚している、妻は旧姓岩崎理央、今は宮部理央である。一六六の背に似合わず女子高生に見える顔で赤い唇とやや高い鼻、少しだけ切れ長の感じの二重の目の睫毛は長く黒髪を後ろで束ねている。年齢は涼真より二つ年上だ。
二人は会社で知り合いそうして結婚した、理央にとっては弟の様な夫であり涼真も妻を姉の様に思っていた。二人共一人っ子であるが。
その姉さん女房夫婦の仲はかなり睦まじい、それで二人で休日になるとよくデートをしている。それはこの日曜もだった。
二人でドライブを楽しんでいた、その中で。
ふとだ、理央は涼真にレストランでオリーブをふんだんに使ったイタリア風の魚料理を食べつつ夫にこんなことを言った。
「私実はね」
「実はって?」
「ええ、実は涼真君と結婚するまでね」
その時まではというのだ。
「男の人とは付き合ったことなかったの、大学時代は」
「あっ、そうだったんだ」
「そうなの、高校時代は違ったけれど」
「じゃあ理央さん四年間は」
「会社に入ってからもね」
その時もというのだ、尚理央は今も勤めている。夫婦で同じ職場に勤めているのだ。
「そうだったの」
「へえ、そうだったんだ」
「涼真君は?」
「あっ、実はね」
ここでだ、涼真は少し苦笑いになって妻に答えた。フォークとナイフでその魚料理をいささかワイルドな動きで切って食べながら。
「僕も高校時代は」
「誰かと付き合ってたの」
「同級生とね、けれどね」
「けれど?」
「大学時代はいなかったよ」
そうした相手はというのだ。
「これといってね」
「そうだったのね」
「それで入社してから理央さんと会って」
「交際して」
「そう、結婚したんだ」
こう妻に話した。
「そうだったんだ」
「そうなの、お互い大学時代は異性とはね」
「異性とは?」
「あっ、何でもないわ」
理央は今の言葉は少し慌てた感じになって打ち消した、涼真は妻のその様子に少しおかしいと思ったがそれは一瞬ですぐに忘れた。
それでだ、理央はこうも言ったのだった。
「ただ、結婚したから」
「うん、お互いにね」
「仲良くね」
「これからもね」
こうした話をしたのだった、そして。
涼真もだ、年上の妻にこんなことを述べた。
「そうそう、別に一人で遊ぶ理由もね」
「そうよね、ないわね」
「あっ、今の言葉は何でもないよ」
咄嗟にだ、涼真は自分の言葉を打ち消した。彼もそうしたが理央はそれがどうしてかわからなかった。何でもない言葉
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