第五章
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「阪神の本も一杯持ってるわ、デイリーも毎日読んでるし」
「それはまた結構ね」
「本格的ね」
「阪神本当に好きなのね」
「まさに生粋のトラキチね」
「じゃあ阪神のことも詳しいわよね」
クラスメイトの一人が身を乗り出してだ、景子に尋ねた。
「やっぱり」
「それなりと思うわ。自分でもね」
「じゃあ色々教えて、私最近阪神好きになったから」
「ええ、それじゃあね」
景子はにこりと笑ってだ、そうしてだった。
そのクラスメイトに阪神のことを明るく楽しく話した、そして他のクラスメイト達も景子達とこの日から色々と話した。
景子は話せば応えてくれる、だが。
こちらから話さないと本当に無口で無表情で本ばかり読んでいる、景子のその特質を理解してからだ、彼女のクラスメイト達はあらためて綾に言った。
「景子ちゃんってね」
「こっちから話さないと何もしないのね」
「本ばかり読んで」
「自分からは動かないのね」
「声をかけたら明るいけれど」
「そういう娘なのね」
「あの娘受身なの」
綾は彼女達に景子のこのことを話した。
「完全なね」
「こっちから言わないと喋らない」
「そういう娘なのね」
「そうなの、そのことは気をつけてね」
頭の中に入れておいて欲しいというのだ。
「そういう娘だってね」
「はい、わかりました」
「そういう娘なのね」
「景子ちゃんって」
「そうなの」
その通りとだ、笑って答えた綾だった。
「景子ちゃん昔からそうなのよ」
「まさかね」
「話しかけると絶対に応えてくれて」
「しかも明るいって」
「本当に意外だったわ」
「そうなのよ、私も最初こんな暗い娘見たことないって思ったわ」
綾にしてもだ、そう思ったというのだ。稽古に最初会った時に。
「それで同じクラスになって一ヶ月程してから勇気を出して声をかけたら」
「ああだったのね」
「滅茶苦茶明るかったのね」
「触ると応えてくれるのよ」
また景子のその特性を話すのだった。
「あの娘はね」
「ううん、そういう娘もいるのね」
「声をかければ明るい」
「それが景子ちゃんなのね」
「そうなのね」
景子のクラスメイト達も頷いた、そうしてだった。
あらためて彼女についてだ、こう言うのだった。
「じゃあこれからもね」
「私達景子ちゃんに声かけてくわね」
「明るくて楽しいから」
「悪い娘じゃないし」
「私もそうしているの、景子ちゃんいい娘よ
付き合いの長い綾も笑顔で言う。
「ただし声をかけた時限定よ」
「そうしないとね」
「わからない娘ってことね」
皆そのことがわかった、そしてまた景子に声をかけるのだった。声をかけられた景子のその太陽の様な明るさを見る為に。
冷たそうで 完
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