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ダウンタウンすと〜り〜
第二章

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「よお、飯食ったか?」
「お母さんとね」
「おばさん元気だよな」
「相変わらずよ。というかね」
「というか?」
「私がガサツとか言ってきたわ、朝から」
 口を尖らせてだった、私は彼に言った。
「あれやこれやとね」
「ガサツって本当だろうが」
「何処が本当よ」
「どうせ御前今朝も御飯に味噌汁かけて食ったんだろ」
「悪い?」
「どう考えても女の子の食い方じゃないだろ」
 笑って私に言って来る、雲一つない青空の下でも朝のカップルの話としてはどうかというものだった。
「それは」
「そう?」
「そうだよ、女の子の朝はな」
「どんなのっていうのよ」
「やっぱりトーストにな」
 正典は憧れを語る顔で前を見ながら私に言ってきた。
「ジャムを付けて。ミルクとサラダで」
「そうしてお洒落にっていうのね」
「テーブルに座ってな。パジャマでベッドで」
「うちちゃぶ台だしベッドもないわよ」
「畳だよな、それで」
「そうよ、そんな洒落たお家じゃないわよ」
 正典に口を尖らせて言うのだった。
「下町の家よ、完全に」
「昔ながらのな」
「代々住んでるね」
 江戸っ子だ、所謂。
「寅さんみたいなね」
「本当にそのままだな」
「それで何でトーストなのよ」
「御飯に味噌汁か」
「そう、その二つよ」
「御前朝にトースト食ったことないんだな」
「一度もないわ、うちではね」
 本当にない、うちは毎日朝はご飯に味噌汁だ。逆にこの二つを食べないと朝に食べた気がしない位だ。
「牛乳は飲むけれど」
「それでもか」
「朝はね」
 それこそだった。
「全く、そんな洒落たものなんか」
「ないんだな」
「絶対にね」
 そうだとだ、私は正典に言ってやった。
「トーストなんてね」
「そうなのね」
「そうよ、そもそもそれはあんたもでしょ」
「ああ、俺の家も畳だしな」
 正典は笑って私に言ってきた。
「それで布団でな」
「ちゃぶ台よね」
「朝は絶対に御飯と味噌汁だよ」
「一緒じゃない」
「だからね」
 それでだとだ、私はまた言った。
「お互いそういうことは言わないことよ」
「絶対にか」
「そうよ、一緒なんだから」
「やれやれだな、下町だな」
「葛飾は下町以外の何でもないでしょ」
「まあそうだな」
 葛飾を下町と言わないで何処を下町というのか、私にはわからなかった。
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