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第一章
飛ばない鷲
その戦闘機が出て来た時には。誰もが驚愕した。
メッサーシュミット262。その後ろに向かっている翼を持つ鷲を見た連合軍はまさに我が目を疑った。
「何っ。ジェット機だと!?」
「もう出て来たのか!?」
ドイツ本土に爆撃に向かう爆撃機の乗組員達も護衛の戦闘機のパイロット達も言った。
その速さは驚異的だった。まさに恐るべき速さだった。
とても追いつけない。その速さで襲い掛かり攻撃を仕掛けてくる。その威力もかなりのものだった。
「何っ、フライングフォートレスが!?」
「一撃か!」
攻撃を受けたB−17が一撃で火を噴いた。乗組員達が一斉に逃げ出す。
「だ、脱出しろ!」
「は、はい!」
「このままじゃ!」
次々に扉から出てパラシュートを開く。そうして危機を脱した。
「何て奴だ」
「バケモンだ」
そしてこう言うのだった。
「あの速さにあの攻撃力」
「厄介なものが出て来たな」
「ジェット機を実用化してな」
それもまた驚くべきことだった。
護衛の戦闘機も相手にならなかった。連合軍の誇るP−47ライトニングもP−51ムスタングも全くであった。戦闘機も爆撃機も次々と撃墜されていった。
圧倒的な強さであった。とても適わないまでの。その戦闘機の強さは連合軍全体に瞬く間に広まりかなりのショックを与えたのであった。
「あんなのがいつも出て来たんじゃな」
「ああ、損害が洒落にならないな」
「どうしようもない」
こう言い合うばかりだった。
「只でさえドイツ軍の戦闘機は強いのにな」
「しかもパイロットの腕はいい」
その両方で定評があるのがルフトパッフェだった。開戦の時からその評価は変わっていない。英国での航空戦でも相当なものだったのだ。
「それでジェット機まで出て来たらな」
「どうしたらいいんだ」
誰もが頭を抱えていた。それは総司令官であるアイゼンハワーも同じであった。彼はメッサーシュミット262の話を聞いて苦しい顔で言うのだった。
「困ったことになったな」
己の執務室で言うのだった。前には参謀達が立っている。その機能を重視した簡素さはまさにアメリカであった。彼は星条旗を背にして己の席に座ったまま述べていた。
「ドイツ本土爆撃に向かう面々は今やパニック状態らしいな」
「はい、そうです」
「それはかなりのものです」
参謀達も次々に述べる。
「まだ出て来た数も回数も少ないのですが」
「それでも今や彼等の間では恐怖の的になっています」
「士気にも影響が出ています」
「それだ。士気だ」
アイゼンハワーもそこを指摘した。その普段は陽気な人懐っこい顔も苦いものになっている。
「それが問題なのだよ。また損害も出てい
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