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緋弾のアリア-諧調の担い手-
始まりから二番目の物語
第五話
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「けれど、決して空っぽのままではいられない。全ての子供達が自らの道行きを決め、自らの色を決め、自らの時の中で自らの律を知らなければならない。……無限とも言える選択肢から常に一つを選び自らの故とする。それが生きるという事だから」


虚空を抱き締めたまま、少女の瞳の色にゆらぎが混じる。
青い双眸に混じる、七色の混合色。


「だけどその中で―――限りなく空白に近いながらも真逆の色と、全ての有色を内包した色が生まれた。一つの“空白-はじまり-”と、そこから生まれた二つの異質な色。」


瞳の色を七色から青紫に似た冷色へと変え、少女は真摯な眼差しで時夜を真正面から見据える。


「全ての始まりから途方もない時を経て、未知の道を示した二つの色の担い手に私は“彼女”を託そうと思っていた」

「……彼女?」

「私が姿を借りている一人の“緋色の少女”。その子を救える可能性を持っているのは、今は貴方と虹色を司る勝者の王だから。だからこそ、私は貴方をこの世界へと呼び招いた」


よくは解らないが、その少女に何か災厄が近づいている。
言葉からはそう読み取れるが、憶測の域を出ない。


「正確には、災厄ではない。でもその子にとっては何よりの苦痛となる。その苦しみからその子を解放出来る人間を、私がそれを託せる人間を私はずっと探していた」


とめどなく。
さながら泉の水が溢れて地中に染み込む様に、少女の声が島の最端にまで深々と浸透していく。


「その為に、私はこの島で全てを見続けていた。総ての子ら(神剣)と生命(人)を。私は“旧約”に背く者、“その約束に牙?く者(アマリリス)”。あの子に相応しい相手を探す為に、全ての世界の事象と経過を記録する存在」


強い光を瞳に灯し、少女が力ある言葉を告げる。


「そして漸く、私は彼女を貴方という人に託す事が出来る」


霧嗣、私は貴方を求めている。
貴方があの子を支える代わりに、私は自身の全てを賭して貴方の願いを叶えてあげる。
それが、貴方が前の世界で失った物だとしても。


「……そこまで俺に期待してもらって悪いけどさ。生憎と俺はそこまで大きなモノを背負って行ける程強くはないよ。ただ、今あるものを大事にするだけでも、それがどれだけ大変か身に染みているから」


その眼差しと想いの乗った言霊に、時夜はそっと肩をすくめた。

静流との思い出。交わした約束。決して失ってはいけない想い。
それこそが、自分にとって深い夜の中で輝くものなのだから。


「それに、俺は君のその言葉の意味を半分も理解出来ていない。今も、夢の中での出来事の様に俯瞰している」


そうだ。あまりに難解で、難しい話に思わず現実感を感じられない。
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