暁 〜小説投稿サイト〜
緋弾のアリア-諧調の担い手-
赤い夢
第二話
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いい?」

「はい、じゃあちょっと待っていて下さいね?」


そう言って、お弁当を取りにキッチンに戻っていくお母さん。
それに伴い、朝食を終えたお父さんが椅子から立ち上がる。


「さて、じゃあ行くか時夜」

「うん」

「はい時夜、お弁当です。無理そうでしたら残しても構いませんからね」

「うん、なるべくちゃんと食べるから」


椅子から立ち上がり、立て掛けてあった幼稚園指定の鞄を肩から掛ける。
そうして、お母さんが手渡してくれた弁当を、鞄にしまい込む。

そうして、両親と一緒に玄関まで向かう。
靴を履き、お父さんと手を繋ぐ。


「じゃあ、ちょっと送ってくる」

「行ってきます!」

「はい、行ってらっしゃい。…時夜、本当に無理はしてませんよね?」

「大丈夫だよ、お母さん。改めて行ってきます」


そうして、終始心配そうな面持ちをしていた見送るお母さんから別れる。
そして俺とお父さんは住宅街に出た。暖かい陽気が朝空より差し込む。

今日の天気は快晴だ。
不意に、俺は違和感を覚えた。


「……あれっ…なんだ?」


そう口の中で呟いた。

一瞬視界がブレる。まるで自身が別世界にいる様な、それを第三者視点で見ている様な感覚。
浮遊感とも言える感覚、感触。

頭を左右に振り、振り払おうとする。
それも刹那の事であったので、また寝不足のせいだと、気には留めなかった。

そして、この頭を過る、微かな痛みにも。






2







「…………」


父親に手を引かれて閑散とした住宅街を二人で共に歩く。
他愛ない会話をしながら、悟られないように虚勢を張る。

時夜は苦悶の声が零れない様に、その歯を食いしばった。


……一体、どうしたんだろう?


バレない様に、日光を遮る様に、涙を隠す様にして額に手を翳して目元を隠す。
苦痛に歪む顔をそうして隠す。その手の隙間から見える、顔色は蒼白だ。


……頭が、割れる様に痛む。


力ない足取りで曲がり角を右に曲がって、いつもの通い慣れた通学路に出る。
もう少しで、もう少しで、文との待ち合わせ場所だ。

たった十数分の事なのに、遥かに時間が経っている様な錯覚に陥る。

今日の朝起きた時には、本当に微かな痛みであった。
会話したりする間はそれを忘れていられる程の、日常生活に支障を来たす事のない小さな痛み。

なのに、それが時間を追う事に徐々に強くなってきた。
目眩がして、気を抜くと倒れかねない程に。


「―――時夜くん…時夜くん?」

「……ああ、文か。おはよう」


痛みに気を取られて、一つテンポが遅れた。

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