赤い夢
第二話
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いい?」
「はい、じゃあちょっと待っていて下さいね?」
そう言って、お弁当を取りにキッチンに戻っていくお母さん。
それに伴い、朝食を終えたお父さんが椅子から立ち上がる。
「さて、じゃあ行くか時夜」
「うん」
「はい時夜、お弁当です。無理そうでしたら残しても構いませんからね」
「うん、なるべくちゃんと食べるから」
椅子から立ち上がり、立て掛けてあった幼稚園指定の鞄を肩から掛ける。
そうして、お母さんが手渡してくれた弁当を、鞄にしまい込む。
そうして、両親と一緒に玄関まで向かう。
靴を履き、お父さんと手を繋ぐ。
「じゃあ、ちょっと送ってくる」
「行ってきます!」
「はい、行ってらっしゃい。…時夜、本当に無理はしてませんよね?」
「大丈夫だよ、お母さん。改めて行ってきます」
そうして、終始心配そうな面持ちをしていた見送るお母さんから別れる。
そして俺とお父さんは住宅街に出た。暖かい陽気が朝空より差し込む。
今日の天気は快晴だ。
不意に、俺は違和感を覚えた。
「……あれっ…なんだ?」
そう口の中で呟いた。
一瞬視界がブレる。まるで自身が別世界にいる様な、それを第三者視点で見ている様な感覚。
浮遊感とも言える感覚、感触。
頭を左右に振り、振り払おうとする。
それも刹那の事であったので、また寝不足のせいだと、気には留めなかった。
そして、この頭を過る、微かな痛みにも。
2
「…………」
父親に手を引かれて閑散とした住宅街を二人で共に歩く。
他愛ない会話をしながら、悟られないように虚勢を張る。
時夜は苦悶の声が零れない様に、その歯を食いしばった。
……一体、どうしたんだろう?
バレない様に、日光を遮る様に、涙を隠す様にして額に手を翳して目元を隠す。
苦痛に歪む顔をそうして隠す。その手の隙間から見える、顔色は蒼白だ。
……頭が、割れる様に痛む。
力ない足取りで曲がり角を右に曲がって、いつもの通い慣れた通学路に出る。
もう少しで、もう少しで、文との待ち合わせ場所だ。
たった十数分の事なのに、遥かに時間が経っている様な錯覚に陥る。
今日の朝起きた時には、本当に微かな痛みであった。
会話したりする間はそれを忘れていられる程の、日常生活に支障を来たす事のない小さな痛み。
なのに、それが時間を追う事に徐々に強くなってきた。
目眩がして、気を抜くと倒れかねない程に。
「―――時夜くん…時夜くん?」
「……ああ、文か。おはよう」
痛みに気を取られて、一つテンポが遅れた。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ