赤い夢
第二話
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そう言葉を交わし、俺も母親の後を追う様に部屋の扉を開ける。
その時の事だった。不意に、世界が“ズレた”。
「…あれっ?」
思わず、扉から手が抜けそうになった。
何となく、身体が気だるく感じた。視界が一瞬ブレる。
それも一瞬の事なので、寝不足のせいだと、俺は気には留めなかった。
1
「…ご馳走様でした」
食事も半ばの所で俺は箸を止めて、そして置いた。
出された朝食も、半分以上が手付かずの状態。出された物を残さない時夜にとって、それは珍しい事だ。
故に、それを見て両親が首を傾げた。
「どうしたんだ、時夜。食欲が無いのか?」
「…うん、なんかあんまりお腹が減ってないみたいだ」
深夜から起きている為に、胃の中は殆ど空っぽだ。空腹感すら覚えていた。
お腹は減ってはいるけれど、どうもこれ以上胃に物が入らない。受け付けない。
「心なしか、顔色も優れませんね」
「ちょっと夜中に怖い夢を見ちゃって、それで少し寝不足気味なだけだから」
心配を掛けない様にと、誤魔化す様に笑み浮かべる。
だが脳裏では、そう口にしながらも深夜に見た夢の事が想起されていた。
だが直に頭を振って、そうして脳内から夢の内容を追放する。
その夢は時夜にとっての、霧嗣にとっての一種のトラウマだ。
故に、思い返すだけでも身が竦みそうになる。夢の不安がまた蘇ってくる。
暗い暗雲に独りで閉ざされた様な、そんな錯覚を覚える。また、現実感を喪失しそうになる。
テーブルの下に隠した手。
それが恐怖で震えそうになるのを、バレない様にひた隠す。
―――嘘を吐いた。
その事実に、胸が刺される様に痛んだ。
そして、本当の事を話す事が出来なかった。
嘘を吐いた事。それよりも、その方が俺にとって罪悪感を与えた。
信頼している両親に、本当の事を告げる事が出来なかった。話す事が出来なかった。
それは、裏を返せば信頼していないという事とも言える。
俺は内心で、否定する様に首を振る。そんな事はないと。
……ただ、俺は怖いのだ。
本当の事を話して、今のこの日常が、両親の俺に向ける顔が豹変するのではないかと。
見た悪夢の様に、今の俺の世界が幻の様に消えて無くなってしまうのではないかと思ってしまう。
「大丈夫ですか、時夜?」
「うん、リアや時切がいてくれたから。とりあえず、ごちそうさまでした。…ごめんなさいお母さん、残しちゃって」
「いえ、気にしなくても大丈夫ですよ。誰にだってそういう時はありますから」
「…ありがとう、今日は文と一緒に行く約束してるからもう出るね。お弁当、用意して貰って
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