3部分:第三章
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第三章
それを見てだ。彼は判断を下した。その判断はだ。
「やるか」
勝負する、それしかなかった。
そのうえであらためて相手バッターを見る。彼もまた避けるつもりはなく打つ気満々だった。このことを強く意識せざるを得なかった。
そしてだ。それを見てからあらためて考えるのであった。
「何を投げる?」
その問題だった。これまで投げた球種も思い出す。それは全てであった。
「俺の持っているボールは全部使った」
変化球投手といっても限りがある。球種にはだ。
そしてだった。相手のこともまた考えた。
「一度投げた球種はどのコースでも見切る」
それが相手だった。かなり手強いのだ。
だからだ。そうしたことまで考えてだ。彼は決断を下したのだった。
「よし」
頷く。それからだった。
セットポジションに入りそこから投球フォームに入る。そうして投げたボールは。
「!!」
相手バッターがそのボールを見て思わず目を驚かせたのが見えた。隆博はそれを見てにやりと笑った。
「勝ったな」
このことを確信したのだ。そうしてだった。
相手は三振してしまった。完全に意表を衝かれた。そのうえで三振してだ。後は隆博がマウンドでガッツポーズをするのだった。勝敗は明らかだった。
「よし、勝った!」
彼は思わず叫んだ。
「これでな!」
まさにシリーズの趨勢を決めた勝負だった。実際にこの攻防が決め手となり隆博のチームは日本一となった。そして祝勝会でのビールかけの時だ。
ビールにまみれている彼に対してだ。須長が問うてきたのだ。無論彼もビールまみれになっている。
「なあ」
「はい?」
「何であそこであれを投げたんだ?」
こう彼に問うのだった。ユニフォームもビールで濡れて一面その匂いに満ちている。
「あのボールをな」
「ストレートをですか」
実は投げた球種はそれだった。彼はストレートを投げたのだ。
「あれをですか」
「ああ。御前ストレートはあまり投げないからな」
割合としてかなり低い。多彩な変化球を活かして投げるのが彼なのである。だからこそここでこういう話になるのであった。
「それで何でなんだ?」
「全部打たれたり見られましたしね」
まずはこう話す彼だった。
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