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101番目の舶ィ語
第七話。常闇からの襲撃者
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であんなに元気に遊んでいたのに……」

音央はショックを受けているようだ。
無理もない。さっきまであんなに元気に遊んでいた子が実はすでに死んでいて死体となって動いていた、なんて事を普通の人間が受け止められる訳がない。

「村に……貴女に、喰われた人々の成れの果てが、あれですか?」

一之江が静かに尋ねる。詞乃ちゃんはクスクスと笑って______

「そういえば、一之江さんは出したお菓子もお茶も口にしなかったね?」

一之江に逆に尋ねた。

「異世界の食べ物を食べたら帰れなくなるのは、常識ですから」

「なるほど。そこの2人と違って、最初から警戒していたんだ?」

「当然です。獲物を安心させる理由なんて、童話の赤ずきんの頃から変わりませんから」

赤ずきんの童話は、狼が赤ずきんちゃんを油断させて食べてしまうお話。
それと同じでこの村では……詞乃ちゃんを筆頭に、死人となっている村人達が、俺達のような迷い込んで来た人を安心させて______食べてしまう、話。
これが『人喰い村』の実態。
本当にある都市伝説の真実のようだ。

「でも!」

人喰い村の実態を考えていた俺の横で音央が声を荒げた。

「でも、さっき……ミーちゃんは、言ってくれたのよ!」

「うん? なんて?」

「『音央ちゃん、食べられないでね?』って!」

音央がそう叫ぶと、詞乃ちゃんのニコニコ顔は驚きに変わった。

「……ほんとに?」

「ああ、俺も聞いたから間違いないよ。零時になる前のことだったよ」

「へえ……」

それまで人懐こいものだった詞乃ちゃんの笑顔がまるで蛇のようなじっとりした、気味の悪い笑みに変化した。

「面白いねぇ? ニンゲンって。まだそういう心が残っていたなんて、驚いた」

目を赤く光らせていき。

「そんな心を取り戻させた、貴女達も……食べたくなったよ?」

ゾクリとするような気味の悪い笑顔なままでそう呟いた。

「ひぅっ」

詞乃ちゃんから溢れる威圧感みたいなものに、音央は飲み込まれたのか、小さな悲鳴を上げる。
俺は両手に包丁を構えて______

「何処の魔女っ子だ??」

食事大好きなキリカを思い出してしまい、詞乃ちゃんに思わず突っ込みを入れていた。

「あいにく人喰いロア枠はいっぱいだよ」

俺が突っ込みを入れ終わるとすぐさま一之江が囁いてきた。

「モンジ、貴女達は先にさっさと逃げて下さい。足手まといです」

「いや、逃げるのは一之江の方だよ。
ここは俺一人で十分だ」

女性を一人残して逃げる……そんな選択肢は今の俺にはない。
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