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狐、嫁入り、涙雨
狐、嫁入り、涙雨
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[1] 最後
――悠久にも永遠にも似た限りある人生、でも思い出してほしい。それを見守る温かな存在があることを。だから、感謝の気持ちを忘れないで――

こんな毎日がいつまでも続けばいい。そう願うのは、あまりに女々しいだろうか。このことは俺―三条光騎(さんじょうこうき)―の目下の悩みだ。俺には彼女がいる。彼女の名は狐宮(こみや)一花(いちか)といって、俺には勿体ない程の美少女だ。小柄で華奢な体躯、ゆるく巻かれたセミロングの髪、瑞々しい唇、どれをとっても、護りたくなる……一花はそんな女の子だ。

そんな俺たちが付き合って一年が経とうとしている。狐宮と三条、話すきっかけは単純に出席番号順の席が近かったから、というものだった。先に話しかけたのは俺、内容は忘れてしまう程に薄いものだったが、それから俺と一花はよく話すようになった。

初めて会ってから一ヶ月、最初にデートに誘ってきたのは一花だった。行き先は映画館で、会話に挙がったことのあるドラマの劇場版を見に行った。それ以来、まだきちんとお付き合いしているわけでもないのに、俺たちはデートをしていた。端から見れば、とっくに付き合っているように映っただろう。それでも、まだ友達という考えでいた……と思う。

夏が過ぎてからは、少しずつ気持ちが揺れていた。どうして一花のような美少女が、俺なんかに親しくしてくれるのか。これといって特徴も長所もない平凡な俺にとって、一花は高嶺の花だ。付き合ってから初めてのクリスマスに、一度だけ訊いたことがある。その時の答えは、
「理由なんてないよ。それが本当の恋だし愛だと思うの。ただ純粋に傍にいたいんだよ」
というものだった。その実直さと恋する乙女の瞳に、俺は一花により一層惹かれたものだ。

おっと、追憶が長引きすぎた。今日は俺と一花が付き合って一年の記念で、運良く休日に重なったため、二人で出掛けることにした。秋めいた風が頬を撫ぜる。髪を整えながらポールの上のアナログ時計を見上げる。そろそろ時間だな。
「お待たせ、光騎くん」
「待ってないよ。さぁ、行こうか」
待ち合わせより15分早い……それでも、10分くらい待っていたけどな。まぁ、口に出すことじゃないし。それに、今日も一花の服装は可愛い。初秋を思わせる温かみのあるドレスシャツと黒のリボンタイ、スカートはチェック柄のフレアで、本当によく似合っている。俺は無意識に一花に可愛いと言っていた。
「ふふ、ありがとう。それと、光騎くんはいつも早いよね。いつも私が待たせちゃう」
「そんなことないさ。着いてスマホを出そうとしたら一花が来るからな」
「私、知ってるんだよ。君が私を待っていてくれるのを」
え……そうなのか。まぁ、いつも待ち合わせ場所は駅前だから、知り合いに見られているかもしれないよな。うん。その可能性は否めない。
「ふふ、光騎く
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