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乱世の確率事象改変
彼女の為に、彼の為に
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というのは大きな意味を持つのだから。
 彼が関靖さんの想いと溶け合っていると示してこそ、幽州の狂信者達に心からの信仰を向けられる。

『やはり黒麒麟は白馬の王の為に戦った。忠義を果たした片腕と共に、彼女の大地を取り返したのだ』

 こんな噂が流れるだろう。証人は白蓮さんと共に戦い、白蓮さんを誰よりも求めている兵士達だ。民の隅々まで人心掌握を齎せる。
 そして、さすがに関靖さんの話を出されると、劉備さんの所に居る白蓮さんは動かざるを得なくなる。
 直接会いに来て怒るだろう。そういう人だ。彼が復讐に走るなんて望まない人だ。関靖さんの願いでも無いと、あの街の長老さんのように語りかけるだろう。
 来なくてもこちらから呼び出せばいい。彼は幽州の仮の主として白蓮さんを呼び出すことくらいするだろう。

 そうして秋斗さんなら、関靖さんの斧一つで、白蓮さんとの敵対関係を構築する。元々劉備軍から離れるつもりはないだろうし、変わってしまった彼を止めようと、余計に白蓮さんは曹操軍に来ないのだから。

 白馬義従と同じく復讐に走ったと大嘘をついて、彼は幽州の民からの信頼を得るのだ。怨嗟の心が癒された白馬義従が噂を流して、仮の主として黒麒麟を認める事になる。
 袁家から幽州を取り返したのに帰って来ない白蓮さんは、語られる義の在り方から名が傷つかなくとも疑念を抱かれる。

 其処に、そっと噂を流せばいい。

『劉玄徳の画策によって白馬の王は幽州に戻れず。例え劉備が友であろうと、同じく友である黒麒麟が取り戻した大地に戻らないはずがあろうか。黒麒麟が劉玄徳の元に戻らないのが何よりの証明。夜天の願いは……劉玄徳の我欲によって引き裂かれたのだ』

 前々に仕込んでおいた噂が此処でも機能する。劉備さんはもう、華琳様の領内では偽りの大徳として認識されつつある為に。
 だから白蓮さんと秋斗さんは被害者として語られ、劉備さんは幽州の大地からの恨みを買う事になり、他にも生活が安定している華琳様の領内の民達は哀しい友情の話に惹きつけられるだろう。

 もう劉備さんを大徳などとは呼ばせない。劉備さんの力は民からの信頼と声だ。広く浅く繋がる絆が、黄巾と似たような変化を起こさせるから乱世を越えられる。末端から向けられる期待が無ければ、彼女は優しいだけの人でしかない。だから、彼女の力になるモノを華琳様の領内から排除しきる。髪の毛一筋たりとも劉備さんが入り込める隙間を無くし、劉の名への、漢への希望を……根絶する。

 “秋斗さん”ならきっと、此処まで考えたはず。
 その為には、やはり白蓮さんとの敵対は必須なのだ。だからこそ関靖さんの斧は必要不可欠。白蓮さんが戻ってくる可能性を作ってはならない。

 思考に潜っているのか、彼は目を細めただけで何も言わない。直ぐに理
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