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乱世の確率事象改変
彼女の為に、彼の為に
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見つめた。

「……で? 俺に何をさせるつもりかな? 黒麒麟と並び立っていた軍師さま」

 引き裂かれる口は見た事のある不敵さ。敵を追い詰める時に浮かべていた冷酷な黒麒麟の昏い笑み。
 脳髄が冷えていく。私の思考が研ぎ澄まされていく。皮肉にも、軍師としての私は、一番守りたいモノを敵として認識し、警鐘を鳴らして頭を回しだした。

 きっとこの人は私が何をさせるつもりなのかを読んでいる。曹操軍の軍師達と関わってきたのだ。同じ答えに辿り着いていてもおかしくない。
 否、否だ。曹操軍は、華琳様は……袁家を根絶するつもりだ。元から“黒き大徳”徐公明として確立させる為に、袁紹さんの頸を落とさせるつもりでいた……彼もそのつもりでいる、そういう事。

――でも、どうして私を敵として見るの? 私がさせようとしている事を理解しているのなら……黒麒麟になりたいあなたは間違いなく同意するはずなのに……。

 また胸が痛い。私を見てくれなかった昏い瞳よりは……マシだ。それでも、苦しい。

――乗り越えないと。憎まれてもいいって決めたのだから。敵意を向けられても……他人のように、接しないと。

 微笑みは浮かべない。ただ冷たく在れるよう、彼の瞳を真っ直ぐに見つめた。疑問を聞くよりも此れからの話をしよう。
 あなたは黒麒麟にはなれない。私が……あなたの代わりに黒を背負います。

「幽州の大地の異質さについてはご存じですか?」
「ある程度だが……歌が止まない、民も兵士も単純には従わない、一人の主だけを求め続けて……それ以外の誰かが治めるのに一苦労な大地になったって聞いてる」
「そうです。古くから幽州に居る地方の有力な豪族でさえ民衆の心に……民の一斉蜂起や白馬義従の反発に怯えてしまっている為、黄巾の乱の二の舞になる可能性も十分にあります」

 あの大地は狂気に堕ちた。黄巾よりも濃厚にして真っ直ぐな狂気に。おかしい、危ういと感じるモノが居ても恐れから目立った行動は出来ず、周りに合わせるしかない脆い場所になってしまった。
 白蓮さんの為だけの大地……彼女が居れば暖かい場所でも、私達には暖かくは無い。彼女が居なければ成り立たない土地など他の権力者からすれば扱い難く、大陸の改革を齎すには問題が多すぎる。

「言い方を変えれば、民によって支配されている大地ってわけだ」
「……そうとも言えますね」

 少し驚く。そんな考え方はしていなかった。相変わらずこの人は少し違う視点からモノを見ている。

「……政治体制が整ってない状態での民衆による統治は時間を置けば無法地帯になるだけ。権力者が末端に強く出られない土地の未来は先細りの崩壊に向かいやすい。袁家が……いや、張勲がどうにか上手く回してるから持ってるだけだわな」
「その張勲さんと話をしてきまし
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