彼女の為に、彼の為に
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「でも私と同じ答えを、彼なら――――」
「違うさ。君は黒麒麟のマガイモノだ。俺もマガイモノだが……それでも黒麒麟を演じられるのは、俺だけなんだよ」
「どういう、こと、ですか……?」
声が掠れて、彼を見つめる視線がブレる。
心を引き裂かれそうな重責を背負って尚、戦う事を選び続ける黒き大徳。知っているからなれると思っても、嘘つきの対価が心を擦り減らして崩していく。
この人はどうして彼が戦っていたかを、きっと知っている。だから、私よりも……。
「だって黒麒麟も俺も……君に出会う前から、本当の始めっから大嘘つきなんだ」
静かに響くその言葉の意味が分からずに彼を見つめる。
ぐしぐしと頭を撫でられて視界が遮られ、そっと耳元に寄せられた唇から……世界を捻じ曲げる黒き大徳の答えが紡がれた。
「いいか? “黒麒麟”が官渡の戦いで欲するのは――――」
それは一番幸せだったあの日と同じように。マガイモノのはずの彼が容易く私の想像を超えて行く。
震えるのは恐怖から。この大陸で誰も考えないような事を平然と口にするこの人は……間違いなく彼と同じモノ。
一つ一つと繋がるイト。黒麒麟の辿ってきた道筋を知っている私だから分かる……彼の考え得る策があった。
「――――それでさ、死人の想いは使わない。黒麒麟が黒麒麟として乱世を生きないと意味が無いんだ。そんな黒麒麟に……徐晃隊は付いて行ったんじゃないのか?」
最後に諭されて、思い出すのは彼らの事。
彼が壊れる事を恐れていた彼らは、死者にまで想いを向けてしまう彼を慕って付いて来た。
彼が彼のままで、好きなように生き抜いてくれたらそれでいい……そうして徐晃隊は死ぬときに笑顔を浮かべてきた。
例え嘘だとしても復讐をする彼など、彼では無い。
徐晃隊は止めるだろう。怒るだろう。許さないだろう。だから……彼は止まる。私の考えた策は、頭に思い浮かんでも使わない。
「俺は黒麒麟に憧れている。徐晃隊みたいに目指してる。だから頭のマガイモノにしかなれない……そうあれかしと願って戦ってるやつらみたいに」
黒麒麟は秋斗さん一人を表すモノじゃない……黒麒麟の身体と呼ばれる彼らを含めて黒麒麟。私はそれさえ、忘れていた。
失われた右腕なら、精強な一番と二番隊の者達なら、今の部隊長達なら……否、彼に着いて行くと決めた人達なら、例え殺されようとも歯向かう。
止められると知っているから彼も言わず、他の策を考え抜いて実行する。
それに気付かなかった私は……黒麒麟のマガイモノにしか、なれない。
「……どうして……」
ぽつりと漏れたのは認められないが故に。
黒麒麟を演じる彼を認めないのではなく、あの人に戻ろうとする事が……私は認められない。
身体を離
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