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猫の憂鬱
第3章
―2―
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左手で身体を撫でた。猫もそう抱かれた方が良いのか、左腕で支えた時より落ち着いた様子だった。
「あ…?」
「何か…」
「いや…」
何か、おかしくないか…?
加納が右腕で支える、左手で撫でる、動作を全て左手でするから、右腕で抱える。
木島には懐かなかった。でも自分には懐いた。そして加納にも。
「え…?」
此れは、偶然なのか?
右手を差し出した木島、左手を差し出した龍太郎と加納。
加納が左手で腹を撫で、猫が満足見せる程、龍太郎の違和感と疑問は膨らんだ。
「おかしくないか?やっぱり。」
「え、何がです?」
「なんで此の猫、右腕で抱えられる事に慣れてるんだ?」
「え…?」
「雪村涼子は右利きだぞ。」
思い出した、自分の母親を。
龍太郎の母親は何時も右腕で龍太郎を抱え、左手で哺乳瓶を持っていた、そして周りに、貴女左利きなの?と勘違いされていた。
自分が左利きだから加納の猫の持ち方を何とも思わなかった、実際自分も右腕で持った。
こういう事だったのか…。
右利きの人間からしたら母親の持ち方は違和感を覚える、自分達が左腕で持ち、右手で作業をするから。
「此の猫は、本当に雪村涼子が育てていたのか?」
娘に何を見せてるんだ――。
二日前の木島の言葉が頭の中で響いた。
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