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猫の憂鬱
第3章
―2―
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ないから、課長が一番高く思える。
自分より長身は見渡せば何処にでも居る、現に八雲が純血新世代の其れなのだ。なのに、生まれたのギリ昭和だよ、で驚いた。其れはもう新世代扱いで良い。
そうか、二十八歳は昭和なのか…。
龍太郎自身が、自分は普通、そういう感覚だからだろう、一八〇センチ位で長身自慢する阿保を見ると鼻で笑ってしまう。御前が長身?何かの冗談だろう、課長クラスとは云わない、せめて八雲クラスになってから出直せ、そしたらなんとなく不本意乍ら長身だと認めてやる、と。
そう考えたら平成生まれの加納は、新世代の癖に小さい。なんだか可哀想。禿げても居るし。
「聞いた時驚いたんです。物凄く高く見えましたので。」
「課長見慣れてるからかな…、全くそう思いません…」
「本郷さんから見て、ワタクシや井上さん、小さく感じません?」
「まあ、其れは。」
「本郷さんも、八雲君から見たら、ちっさいなぁ、なのでしょうね。はっきりとワタクシ、馨ちゃんで案外細(コマ)いのな、と云われましたので。」
「五センチって、大きいなぁ。」
「木島さんは論外ですね。」
木島の時には下げる腕、龍太郎の時には上がる。傘一つでもこんなに違うのかと驚く。
冷たい湿った空気が鼻を取り巻く。二日前来た時感じたあの不快な臭いは消え、唯々雨の湿気を感じた。
「窓が開いてるのか。」
レースカーテンが揺れている。床が少し濡れていた。
「何故…」
「斎藤さんかな。」
ネェ…。
龍太郎を待って居たかのように聞こえた声。階段の上から聞こえた。
「出なかったのか?」
幾ら猫でも流石に雨の日に散歩はしない。加納は笑い、猫は濡れるのが嫌いですよ、と教えた。
「嗚呼、そう云えばそうだな。聞いた事あります。」
「いらっしゃい。なんて可愛いお嬢さんだ。」
木島の時には龍太郎に媚びた、然し今は龍太郎を無視し加納だけを見詰め、寄った。
「ふふ、可愛い。」
もっと触るのよ、と云わんばかりに猫は小さな顔を加納の掌に擦り、オルオルと喉を鳴らし乍らスラックスに爪を立てた。
確定した。
木島は女に言い寄られもしなければ、猫からも言い寄られない。此の猫に喉さえ鳴らして貰えなかったのだ。
「加納さんって、猫にもてますね。」
「女性に好かれるより嬉しいものです。」
猫は矢鱈加納の肩元を嗅ぎ、思い切り首を擦り付けた。
マーキングである。
「なんで其処を重点的に…」
「さあ…、あ。」
猫を逆方向に乗せた加納は、少し肩の臭いを嗅いだ。
「若しかして、琥珀の匂いかな…」
「琥珀…?」
「いえ、何でもありません。」
だったら君はこっちね、と左腕で猫を固定した。
「ううん…抱き難い…」
「右で持てば良いじゃないですか。」
「ううん…」
矢張り如何やっても違和感あるのか、結局右で持ち直し、
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