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猫の憂鬱
第3章
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電話が壊れそうなので止めたが。其れで無くとも最近良くシャットダウンするのに。
「大人しくな、拓也。」
「やー、お兄行っちゃやだーぁ。」
「気持ち悪い、井上。」
「御宅の真似しただけだけど。」
云った側から喧嘩を始める。
眉間を掻いた龍太郎は加納を一瞥し、部屋を出た。


*****


助手席から降りた龍太郎に傘を差す加納は雪村邸を見上げ、妙に熱を持った太腿を龍太郎は触った。
「なんで、シートヒーター入れてたんです…?」
「熱かったですか?」
「此処に着く迄に、焼き殺す気なのかと疑っていた。」
「仰って下されば良かったのに。」
11月も半ばを過ぎ、確かに寒いとは思うのだが、シートヒーターを入れる季節では未だ無いと思う。加納と木島は今から此れを使い、冬になったら一体如何する気なのだろうと他人事乍ら考えた。
署から此処迄、二十分無い程の時間だが、加納は一度だって“熱く御座いませんか?”とは聞かなかった。
聞かなかった詰まり、木島との感覚で運転して居たのだ。
おい熱いぞと云えば良かったのだが、そんなに仲良い訳でも教育している訳でもない為、じっと耐えた。
耐えて、今太腿が感覚麻痺を起こしている。
車から降りた加納は傘を持った儘じっと本郷を見上げ、其の視線の気持ち悪さに龍太郎は少し離れた。
「なんです?」
「本郷さん、ベンツ似合いますね、元から身長がおありなのに、小顔でらっしゃるので、以上に高く見えます。羨ましい。」
あのチビが此の車から降りたら、唯の虚栄心の塊で滑稽ですよ、と加納は笑う。
チビ程、でかい車に乗りたがる。
とは云わないが(木島の車はそんなに大きくは無い)、助手席だから良いもの、所有者だったら少し笑ってしまうかも知れない。身の丈に合った物に乗れよ、となる。例えば、BMWに吸収される前のMINIとか、ミニとか、後MINIとか。なんでミニが5ドアーになってる、ミニの癖に。
「そんなに高いか?俺。一八〇しか無いですけど。五センチか変わらないでしょう。」
「ワタクシは小さいので…、正直、こんなチビがロングに乗るのも滑稽かな、と…。然し、ロングしか無かったのですよ…」
「好きなのに乗れば良いんじゃないでしょうか。」
自分が若い時なら長身だと思うが、今はそう思わない。高校時代は其れを自覚して居た、然し干支が一周した頃からか、そう、年号が代わり生まれた所謂“新世代”、其れに囲まれると自分の身長が普通に思えて来た。
なんだ、やっぱり俺は普通じゃないか。誰だ、巨人とか貶した奴。如何せ木島さんだろう。
龍太郎が人生で初めて此の人高いなと思ったのは他でもない課長、其れは今でも変わりはせず、日本で課長以上の長身に会った事が無い。北欧やアメリカに行けばわんさか居るが、日本で一九〇センチ越えはそうそう見ない。見
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