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Holly Night
第2章
―――3―
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んよ。
菅原の声が部屋に付けられる電話の音で途切れ、眠っていた課長は大きく目を開いた。
「はい…」
「チェックアウトのお時間ですが、如何されますか?」
時計を見ると九時だった。
「泊まります。」
其れだけ云って課長は受話器を上から落とした。
もう何も、考えたくない。
ずっしりとした疲労は容易く睡魔を呼び、又電話の着信音で目を覚ました。
番号だけの表示。
年が明けていた。
「はい…」
締め付けるような頭の痛さが、聞こえた声にすぅっと引いた。
云って良いのか?此れを。
愛する仕方を知らない人間の愛情表現は、極めてエゴイスティック。そう、云われたのに。
「会いたい…」
「勝手過ぎんの、自分。」
そんな愛情を受け止める側は、セルフィッシュ。
自分勝手な愛情を押し付け合う。拒絶してしまえれば、何処迄もエゴイストで居られるのに。相手が望む時にだけ愛情を与えてしまえば、何処迄もセルフィッシュで居られるのに。
何て、自分勝手、何て、身勝手な愛情だろう。
「なんで本当に来るんだよ…」
「呼んだやんか。」
子供は一生、親から与えられた物を覚えている、喜怒哀楽全てを。
此の男から与えられた物全てを覚えているのは、セルフィッシュだった。
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