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Holly Night
第1章・一年前
―5―
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御前。信号が赤だっつってんだよ。良いか?点滅信号はな、黄色が減速、赤が一時停止、車があったら黄色が優先なんだよ。教習所で何習ったんだよマジで…」
「っていうか御宅、マフラー改造してるな?一寸、音、出してみろ。」
一時停止無視、速度違反、加えて車検に通らない程の改造、元から頭痛持ちの拓也の頭は痛くなって来た。
「こんな奴に突っ込んだばかりに俺のゴールドが消えんのか…」
「どんまいイノさん…」
「此のダサいウィングへし折れ。ワゴン改造すんなよ、だっせぇな。」
「止めろよ!」
男は漸く状況が飲み込めたらしく、拓也に突っ掛かる事はしなくなった。
レッカー車を呼ぶのは良いが、如何やって署に戻るか、考えて居るとサイレンの音が聞こえ、拓也は怯えた。
パトランプを付けた青いBMW、口笛を鳴らした交通課刑事は其の車の前に拓也を押し出した。
「マジでマジでマジで、誰が呼んだんだよ!」
「俺達の司令塔は課長だ。」
運転席から身を出した本郷は拓也の襟を掴み、後部座席に押し込むとドアーを蹴った。
「俺は刑事で、御前の子守じゃない。」
「御免ね?龍太郎様…?」
「殴られたいのか。黙ってろ。」
「本気で怒ってんだけど…」
交通課刑事に助けを求めるが、拓也でさえ憤慨した本郷を宥める事は出来ず、出来るのは時間しかない。
「当たり前だろう。刑事の癖に事故起こして、謹慎だと?謹慎で良かったな!解雇だったら又木島さんだ!」
雄叫び、バンバンとハンドルを叩き乍ら本郷は怒りを放出した。拓也は黙った侭頷き、潰瘍が悪化しませんように、と願った。
「御前が!問題起こす度に!俺が!せんで良い苦労をする!誰が!面倒!見ると思ってるんだ!此の、一ヶ月!」
今日から一ヶ月自宅に返さないと課長から云われた。当然着替えはなく、取りに行くのは本郷である。着替えた物を自宅に運ぶのも本郷であり、同居する女から嫌味云われるのも本郷なのだ。
「御免…」
「退かせパトカー!車が動かんぞ!一方通行だろうが!」
「本郷、落ち着け…」
「煩い!早く退かせ!」
「誰に口聞いてんだ、小僧!一課だからってでけぇ顔すんな!」
「そうだ!生意気だぞ本郷!」
「嗚呼!?喧しいぞ、うだつの上がらん耄碌爺!二号機に番号入れるぞ!貴様等は切符切って小遣い稼ぎしていろ!」
「誰が耄碌だ!」
「交通課馬鹿にすんなよ!」
「早く退かせ!現場に行くんだよ、女が刺されたんだ。」
「早く云えよ!」
「嗚呼、だから来たのね。」
引き取りで来る程優しいと思っちゃ居なかったが、課長も本郷も。
「胃が痛い。」
本郷の言葉に拓也は項垂れた。
「わあ、本郷さん機嫌悪いですねー。」
現場を荒らす気なのか本郷の足取りは荒く、状況を説明する鑑識は苦笑った。
拓也も、笑う事しか出来なかった。
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