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Holly Night
第1章・一年前
―4―
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拓也も其の雛人形は記憶に残っている。
雛の小さな口元が、奉納と聞いた瞬間歪んだのだ。
見間違いだろうと本郷は思ったが其の晩だ、本郷の身体に異変が起きた。一週間以上、原因不明の四十度前後の熱が続き、悪夢に魘された。雛が恨みがましく本郷を睨み、貴様が女なら、女なら…、何故だ、何故女でない…、そう繰り返した。
ならば貴様も道連れだ、私だけ逝きはせぬ…。
最悪だった、内裏の首を持った雛に連日追い回された。本郷の首と入れ替える積もりなのだ。
医者からも、体力が限界かも知れん、と匙を投げられたが、其の雛人形を奉納し、焚き上げた翌日、嘘みたく本郷の高熱が下がったのだ。医者も首を傾げ、後二三日続いて居れば坊主の出番でしたでしょうな、と坊主をがっかりさせた。
其れから本郷は怪談話を極端に嫌うようになった。
「良い妖怪だって居るかも知んねぇじゃん。」
「良い妖怪ってなんだ!悪いから妖怪なんだろうが!今直ぐぬらりひょんに引き取って貰え!」
「ヨウカイってナンだい?ヌラ…リヒョン…?」
「ゴーストの親戚だよ。」
「ワァオ、じゃ此のサンタは良い奴さ。」
何故そう楽観的なのか、何を以って“良い奴”と言い切れるのか、本郷には判らず、唯々サンタの人形が不気味でならない。
死霊だって市民権はあるんだ、邪険にしたら可哀想だよ、とイギリス事情を持ち出すが、生憎日本に於いて死霊への人権は無い。お隣に住もうが同居しようがイギリス人には問題無い話かも知れないが、日本では即刻退治される対象だ。
「リュタは絶対イングランドに住めないねー。」
「ええ…」
「前住んでたアパート、横が幽霊だった。」
「最低!」
「クリスマスは大人しいよ、其の代わり。」
俺ん家が賑やかだったけどね、とサンタと一緒にヘンリーは笑った、邪悪に。
「いきなり音楽は変わるし、シャワーは勝手に浴びるし、ケーキは減るし、参加するなら会費払って欲しいよ。」
ぶりぶりヘンリーは文句云うが、ふっと拓也は考えた。
「えっと、其れって何時頃の話?」
「十代かな。拓也と遊んでた頃。懐かしいね、十年前だよ!」
サンタを威嚇するヘンリーの肩を拓也は叩き、哀れむような表情で頷いて見せた。
「オゥケィ、ヘンリー、其れ、薬での幻覚だぜ。何キメてた、幻覚だからLSDか?クリスマスだからって羽目外したか?」
「え…?」
やっぱり…、と元薬物中毒者を本郷は哀れんだ。
「え?嘘。あの時俺、コカだけだったんだけど…」
「御前さぁ、元からテンション高ぇのに、何で更にコカインとLSD摂取すんの?落ち着けよ、ヘロインにしとけよ。」
「うう…、ヘロインは二度としない!アレで俺の人生終わったんだ!」
「大体ヘンリーは、何で態々日本のに来たんだ?其処迄薬が好きなら、世界一薬に厳しい国に来なくとも良かったんじゃないか?マリフ
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