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Holly Night
序章
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愛いんだから、と茶化した。
「一年か。早いな。」
「ですね。」
そういえば、と菅原は本郷の方を向いた。
「井上さんも居ませんね。」
「拓也も家族サービスです。」
「娘さんと妖怪ウォッチ観に行くって云ってましたけど、あれ今日だったんだ。僕も娘と行こうかな。妖怪ウォッチ知らないですけど、今日本でポケモン並みに流行ってるんだよ、って。」
「嗚呼、あれ妖怪ウォッチって云うのか。拓也が大金叩いてました。なんか良く判らん面子みたいなやつです。」
「メダルですね、其れ。前売り券に付いてるメダル、オークションで一万以上するんですよ。」
「え…?たかが玩具に、あんなの一枚が一万?」
寿司でも食べに行った方がマシである。
「加納さんもですけど、ほら、井上さんって、子供の事になると見境なくなるじゃないですか。例え其れが一時の楽しみでも。井上さんは子供達の其の一秒を何よりも大事にしてますから。子供の一日と大人の一日は全然違う、明日になりゃ忘れる事でも其の日一日を子供は全力で生きる、大人は其の手助けをすりゃ良い、例え明日無駄になっても、…素晴らしい持論じゃないですか。」
「特に拓也の“子供達”は、ですね。」
「ええ。皆、幸せになれると良いですね。」
菅原は愛らしい笑顔で呟き、笑顔の裏で、井上と知り合う結果になった一年前の、聖夜に相応しくない悲しい事件を思い出した。


*****


「今日はイヴだよ、早く帰らないのかい?」
出されたスコッチ、拓也は一口飲むと紫煙を吐いた。
バー・ローザ。拓也の行き着けのバーで、毎晩帰宅前に必ず足を向ける。
イギリス家具で統一された店内を間接照明の明かりが照らす。足元は注意して見ないと頼りない。
「明日娘に振り回されんだよ。充電しとかねぇと。」
拓也の微笑にマスターのヘンリーは微笑んだ。
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