序章
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以外の女に興味が無いのだ。合点行った。
「留め具が壊れたか何かで修理に出そうと思って持ってた…其ぉれぇを、斎藤さんが目敏く見付けて、ほら、彼の方考古学者じゃないですか。装飾品の復元とか専門中の専門じゃないですか。僕達、見た瞬間ぶっ倒れそうになったんですけど、流石彼の方本職ですよ、値の付けられない物見てるんで、全く動揺せず、直したるわ、て。で加納さんは、ただで直して貰った、と。注文迄付けて。」
「鬱陶しい男だな。」
「なんか、留め具にね、パール付けてって。一粒ですよ、十万です。百何年前かな、の、バロックパールです。」
「ブラックパール?」
「いえ、バロック、パールです。雫型の、丸くない真珠、ありますよね?あれです。」
「ふーん、馬鹿じゃないのか。」
「いやぁ、そうは仰いますけど本郷さん、加納さんの愛情ですよ。其の、バロックパールを見た斎藤さん、五十万で…いいや言い値で売ってくれ、状態が良過ぎる、って云ったんですよ。斎藤さん、考古学者のスウィッチが入ると訛り消えるんで、本気なんだな、此れって本当に凄い真珠なんだなと思いました。」
「斎藤さんも馬鹿だな。」
「斎藤さん、六月生まれなんですけど、斎藤さんの奥様が六月の誕生石…真珠を凄く愛してらっしゃるんですよ。お会いする時何時も身体の何処かにパールのアクセサリー付けてらっしゃいます。時期も時期だし、クリスマスプレゼントかなって。でも加納さん、例え百万でも譲りません、ワタクシが選んだ物でしたら買値でお譲りしますが生憎此れは妻が選んだ物ですので、って。其れ云われちゃ、何気に愛妻家の斎藤さんは黙るしかないですよ。」
「皆、愛妻家だな。イヴには良い話だ。」
雪の舞い降りを珈琲飲み乍ら見ていた課長は呟き、俺も愛妻家になるかな、と珈琲を菅原に渡した。
「御前は?今年は家族とか?」
「はい。ドイツから来てますから。」
菅原も又既婚者で、菅原本人は日本に居るのだが、妻子はドイツに居る。娘の長期休みの時期は何時も日本で、今日も当然菅原の妻子は日本に居る。
本当なら妻子を日本に寄越したい所だが、娘は日本語が話せず、又ドイツでの学校生活の方が楽しいからと、娘の希望でドイツに置いている。
「お二人は呼ばれないんですか?」
「小さかったらね、日本に住まわせるんですけど、中学生ですから、もうドイツに居た方が良いかなって。幼稚園から高校迄一貫なんで。」
「え?中学生?大きいですね。」
「大きいって云っても、僕自体が三十六ですからね、妥当じゃないですか?」
嗚呼、と木島は納得した。
菅原の童顔加減にうっかり年齢を忘れる所だが、菅原は木島より年上である。
「課長さんは?」
「聞くな。変わらん。」
「ふふ。貴方も充分愛妻家じゃないですか。」
課長は黒目を上に向け、恥ずかしそうに鼻筋を掻く、其れを菅原が可
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