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Holly Night
序章
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を狙う。
特にクリスマス…此の時の犯罪率は一年通し一番多い。
せめて、せめて、今から明日迄、痴漢とか窃盗とか、そう云う犯人を署に呼んで調書だけで済む犯罪だけで、絶対に、絶対に殺人は起きないで、と願わずに居られない。
二人は思う。
何が悲しくて聖夜に二人で過ごさなければならない。
「じゃあな龍太、明日一日大人しくしてろよ。」
全身真っ黒で、死神みたいだなと、支度済んだ井上を見て木島は思った。
一方加納はアイボリーのコートと白いマフラーを巻かず腕に掛けている。
「対局…」
「ワタクシ天使です。」
「は?フリーザの間違いだろう、彼奴も白い。」
「何か仰いましたか?」
「じゃ俺バイキンマンな、バイバイキーン。」
二人が部屋から出た瞬間、本郷は胃薬を大量に飲み、木島から睨まれた。
「なんで加納!?井上も!」
「彼奴もカトリックだ。井上はもうしょうが無い、俺には止められんさ。」
「だからって。」
仏教徒或いは無宗教の俺達には聖夜だろうが何だろうが何も関係無い話だが、カトリックの彼奴等はイースター祭に続く一年で一番大事な日だから事件には関わらせない、其れが課長の考えだ。
加納井上だけでは無い、此の課に居るカトリック教徒はイヴの夜勤と翌日の二十五日は出勤しない。其の代わり、八月の所謂盆休みに休みは無い。
最も刑事に、そんな生易しい世間休日事情は全く関係無いのだが。
だからまあ、夏休み無しとクリスマス出勤どっち選ぶ?と聞いている。クリスマスに死体なんて絶対見たくない、教会行かないといけないんで、と五人全員、夏休み無しを選んで居るが、此の課が特殊なだけである。
椅子から立った課長は窓に向かい、木島の言葉を静止した。
「御前には判らんだろうな、結婚も出来ず、してくれる奇特なマリアも居らず、本人も地雷其のもので、家族のアレが。嗚呼、可哀想に木島。」
「木島さんはなんで結婚しないんですか?」
「はは、本郷、木島はな、大変可哀想な人格を持って居るから、しないんじゃなくて、出来ないんだよ。御前が仮に女だったとして、此奴と結婚したいか?」
「いいえ!」
本郷の即答に課長は腹から笑い、木島に何か云われたが本郷は気にしなかった。
「本郷も独身だな。」
「ええ。」
「しないのか。」
「しませんね。」
「一人が楽か。」
「そういう訳ではありませんが、興味が無いんです。俺、恋ってのが良く判らないんです、何が恋なのかさえも。」
鼠色の空、白い綿雪が一つ落ち、暫くすると彼方此方から落ちて来た。
「恋をした事が無い…?」
木島の裏返った声に本郷は頷き、課長と木島は見合った。
「如何生きたら、恋しなくて済むんだ?何の病気なんだ?其れは。」
「判らない。何が恋なのかも判らないから、気付かないだけなのかも知れない。」
「泣く程人を愛した
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