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歪んだ愛
―其の後―
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仙道逮捕の新聞を読む雪子は唇尖らせ息を吐いた。
「なんか、もやもやの残るへぇんな事件だったわね。」
「殺人事件が清々しかったら怖いだろう。」
まあね、と雪子は新聞を畳み、焼酎の入るグラスを傾けた。和臣が来た時一杯分だけ減っていた焼酎パックは、もう半分以上量を減らし、軽い。
からん。
猫の形をしたベルが心地良く鳴る。
「またハラキリなの?」
今夜も眩いブロンドを靡かせ、ローザのマスター、ヘンリーが云った。
「又って、私一回も腹切りなんてした事無いけど…」
「んー…、なんダッケ。」
「貸切、な。」
「あ、そうそう、カシキリー。カシキリゴメン。」
「打首御免、みたく云うなよ。」
「A-ha-ha!ゴメーンゴメン、いったんゴメーン。」
あはは、笑い去って行き、なんでこうもテンションが高いのか。矢張り未だ危ない薬でもしているんじゃないかと疑う。
「一旦御免ってなんだよ…」
「知らない?一反木綿モチーフの妖怪。ヘンリー、筋金入りのゲーマーなのよ。」
一反木綿がモチーフの妖怪?其れは一体なんなんだ。抑、一反木綿が褌の妖怪だろう、其れがモチーフの妖怪とは一体。
彼が幾つか知らないが、ヘンリーがゲーマーなのももやもやし、日本に移住した理由に焼酎が吹き出そうになった。
彼が日本に来た理由は、本国でだと発売が遅れるから、最悪発売さえされないから…そんな日本のゲーム愛からだった。日本語を覚えたのも、ゲームからだった。
「腹切りとか何処で覚えたんだよ…」
「戦国ナントカ系じゃない?此の間してたわ、店のテレビで。赤い人がなんかしてたわ。」
「嗚呼。赤…真田幸村か。」
生憎和臣は其の戦国何ちゃら系のゲームは判らないが、戦国だろう?ハラキリもニンジャもチョンマゲもさぞ沢山であろう、と貸し切りと腹切りを間違えた事に納得した。
時計の針は軈て九時を差そうとしてた。
猫が、鳴く。
「お待たせしました、木島さん。」
何処かで一杯引っ掛けて来たのかと問いたい程テンション高いまどかが、顔の前でVサインを作り乍ら云った。
「其の節は疑ってくれて有難う!」
初っ端から嫌味である。そして、全身ハイブランドと派手だ。
「だからさぁ、こうしてな…?」
「ジンフィズ下さい!」
「はい。」
和臣の言葉を無視しまどかは注文し、カクテルドレス姿でシェイカーを振る雪子に熱い視線を送って居る。
駄目だ、此奴。
気の多い女なのは良く判った。
左手でコースターを置き、流れる様に右手でジンフィズの入るグラスを置く雪子をまどかは見詰め、どストライク…、とグラスを和臣に向けた。
前にも“ミユキ”が同じ台詞を聞いた気がするが気の所為だろうか。
「ゆりかに。」
其れで良いのだろうか。
あの後、殺害されたのは“東条ゆりか”だと司法が下したが、まどかの戸籍は未だ
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