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歪んだ愛
第3章
―6―
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い。だから、活発になった。ゆりかが大人しい分、一層目立った。
此れに手を焼いたのが父親で、もっと落ち着け、と云ったが、二人揃って大人しかったら気味が悪い、と母親が云った。

――まどかは男の子だったら良かったわね。そしたら活発でもパパに文句云われなかったのに。
――そっか。ママは?ママは男の子の方が良いと思う?
――そうねぇ、男の子の方が元気あって良いと思うけど。男の子の怪我は勲章だって云うけど。
――じゃあ、今日から男の子になる!
――本当、ふふ。

二人の差は益々開いた。
誰が見てもはっきりと区別出来、中学生になると、小学校から仲の良い男子生徒等から、おいおいオメェは学ランだろうがよ、と愛情で茶化された。
此の中学時代、一人の男子生徒とまどかは仲良くなる。彼はまどか達の小学校グループの中に、入学して加わった生徒だった。色白で、成長期前なのも重なり、本物の女にしか見えない、美少年とは此の男の為に存在する言葉では無いのかとさえ思った。
彼はトランスジェンダーで、自分の性を女だと意識していた。
其処で、あの内科医が覚えていた“まどかの学ラン姿”に繋がる。
セーラー服着てみたい、とこっそり打ち明けた彼に、体格も変わらなかったので放課後、御前カマ臭いから僕と制服交換しろよ、と何時ものグループの馬鹿騒ぎの中云った。他の男子生徒も、まどかより女っぽいから絶対似合うぜ、と笑う。此れは前以て打ち合わせしていた事なので、彼は拒絶の演技をし乍らも制服を交換した。
交換した二人を見たメンバーは、違和感無し、そっちが本来だろう、と、薄々彼の事を知っていた風な言葉を云った。そして此のグループで一番体格良く冷静沈着な、幼稚園の頃からまどかと連む男子生徒が「職員室行こうぜ」と声変わりした声で云った。
まどか達のグループは全員で六人、此の幼馴染みだけが変声を完全に終えていた。
まどか達を見た担任は笑うだけ笑い、結果は?、と彼を見た。

――こっちが、良いです。
――判った。話してみる。

彼の両親は前以て学校側に息子がMtF…Male to Femaleの略で、肉体は男だが心が女という性同一性障害である事を診断書と共に伝えていた。彼も周りも多感な時期で、彼自身も周りも其れによって性を混乱する可能性が高いと、モンスターペアレンツに見習って欲しいと思う程、息子と同じに周りの発育を気に掛ける模範的な両親だったので服装は男子だった。けれど、出来るだけ女生徒として扱って欲しい…其れだけは釘を刺した。
実は彼、此の障害の所為で小学校時代、残忍で卑劣な苛めを受けており、中学を機に転校をせざるを得なかった。
事情を知る担任は、ジェンダーフリーを意欲的に考える現代的な教諭で、だから担任を任されたのだが、故に良く良く考え、如何に彼が傷付かないで済むか考えていた
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