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歪んだ愛
第3章
―2―
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た。
「嫌ね、此の猥褻刑事。」
移ったグロスを親指で拭い、ティッシュで拭くと髪に触れた。
時間にして一時間、夕日はもう沈んでいた。代わりに向かいのマンションはちらほらと蛍の様に明かりが点く。
「此れで終わりよ。」
イヤリングを嵌める指が耳から離れた。付け睫毛の感触を下瞼にしっかり教えた和臣は目を開き、姿見に映る自分に腰が抜けた。
「か…母さん…!痛…!」
姿見に映る姿は母親そっくりで、逃げ様と引っ込んだが後ろにあるソファに引っ掛かった。
ソファにしがみ付き、怯えた目で鏡を見る和臣に雪子は笑い、私も支度しよ、と寝室に入った。五分程でイブニングドレスに着替えた雪子が寝室から出、メイクボックスの前に座ると瞬く間に化粧を終えた。
「あ、そうだ。」
雪子の黒髪碧眼に思い出した様和臣は、カラーコンタクトの入るケースをスラックスのポケットから取り出し、嵌めた。
「課長、準備出来た。」
ジャケットに袖を通し乍ら課長に電話する和臣を雪子は盗撮し、電話中の課長に送った。メールを受信した事に気付いた課長は写真を確認すると盛大に笑い、いきなり笑われた事に言葉を止めた和臣は、横で電話を構える雪子に、盗撮は犯罪だからな、と釘を刺した。
「店迄何で行くんだ?」
「タクシーよ。」
「送ろうか?」
「嗚呼、大丈夫よ。七時に予約してるから。」
「そっか。」
一分でも多くの時間を一緒に居たいと思うのは我儘だろうか。
「行かないの?」
「行くよ。」
ドアーノブに触れた侭、何分時間が経ったのだろう…永遠の様な刹那、刹那の様な永遠……。
「又後でね。」
「ん?」
「仕事終わったら、スーツ取りに来るでしょう?まさか其の格好で帰るの?」
「あ、そうだね。うん。」
「車、置いといたら?」
「判った。」
秋の匂い。何時迄蝉は鳴くのだろう。


*****


七時半、課長が指定した時間に指定されたビルの七階に和臣は着いた。
「其奴が来たらさり気なく近くに置けば良いんだな?」
「嗚呼。」
ドアーを開くと、マスターらしき化粧のどぎつい女と課長が立った侭話して居た。
「木島か…?」
「うん。」
「判らんな…」
化粧一つで真逆の顔になる、其れを目の当たりにした課長は、やっぱ女って詐欺師だな、と此れからの流れを説明した。
今夜相手を如何こうする訳では無く、女として、目当ての人物の連絡先を交換する。数日やり取りし、其の文面を時一に分析して貰う、という流れだった。
「夏樹の時にも思ったんだけど、違法にならない?」
「大丈夫だろう。犯罪を誘発してる訳じゃないんだから。」
此れの目的は、ストーカーの実態を知る事であり、動機を知る事、此れが違法と云われるならもう刑事等辞める。
「じゃなくて、一般人巻き込んでるじゃん。」
(ぼく)は買
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