第3章
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宅していた生活安全課の担当刑事が夜の十時位にゆりかを見たと翌日…詰まり今朝報告しに来た。
何処に居た、と聞くと、駅とは逆の方向に向かって居た。少し気になったので後を着けると、飲み屋が入るビルに入って行った、其処で見失ったのでもう後は着けず帰宅した。
そう刑事は説明し、動いたのは和臣だった。
昼頃ゆりかの様子を見に行き、監視のあった一週間問題無かった聞いた。ゆりかは静かに首を振り、思い出した様に、何かに使えるかもしれないので、とまどかの携帯電話の番号を渡した。其の場で掛けてみたが矢張り無機質なアナウンスが流れるだけだった。
――御茶、淹れて来ますね。
――其の間、まどかの部屋、見てて良いか?
――良いですよ。
まどかの部屋は、初めて見た日と変わりなかった。クローゼットの中以外は。
初めて見た日は乱雑に収納されていたクローゼットの中が綺麗に整頓されている。袋に入った侭の服やバッグがきちんと袋から出され、袋は畳まれていた。
何でこんな事したんだ?
和臣の疑問に重なる加納の声。
机にあった筈の写真が無くなっていた。
――あれ…、此れ、何でしょうか。
ベッドの下から少しだけ見える布地に加納は気付き、引き摺り出すと其れはスカーフだった。
――此れ、前に来た時ありました?
あれば確実に気付く。
現に加納が気付き、其れに、初めてまどかの部屋を見た時、此のベッドに夏樹が座ったのだ。スカーフの端が見えていた、少し横に。
だからあの時此のスカーフがベッドの下にあれば確実に気付き、出していた。
クローゼットを整理する時、落ちたのか?
そう思ったが、紙袋迄きちんと畳むゆりかの性格からして、落ちた事に気付かない筈が無い。
見付けたスカーフをジャケットに仕舞った時、見ていたかの様にゆりかの声が飛んで来た。
――御茶、入りました。
――…嗚呼。
写真の事を聞くべきか。
沈黙の後、先に口を開いたのはゆりかだった、写真の場所が気になるんですよね?と。
写真はゆりかの部屋にあった。其の前に、和臣が前に渡したミニブーケが少し枯れた状態で添えられていた。
――そう云えば、御前は普段、何してるんだ?
応接室に通され、紅茶を飲む和臣は其れとなく聞いた。
――何もしてませんよ。
――夏樹さんと会った時、色々聞いた。
――…何を?
白いカップで口元を隠すゆりかの目は、強烈な嫌悪を和臣に見せた。
――夏樹さんが、無職なら事務所戻って来てって。
――嫌です。
――何で?
――私、あの事務所嫌いなんです。
嫌いなんです…。
はっきり云ったが、大学を卒業する迄一年半働いて居た。
嫌いなのに一年半も働くのだろうか。
弁護士でもなんでも無い、何時でも辞められる状況にあるアルバイトなのに。
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