第3章
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か、チョコレートの廃棄を恐れた菓子会社決死の策に、日本女が踊らされたのだから。
なので和臣、誕生日よりもヴァレンタインが好きで、二月十四日、署に着いた瞬間婦警に群がられるのが好きだったりする。其れと、和臣が事件で関わった女性達迄も署に集まる。十年前の事件関係者さえも、毎年毎年律儀にチョコレートを渡す。
チョコレート以外のプレゼントは、誕生日でも無いので興味無く、速攻で廃棄する。
最も此れは、“女に持て”“チョコレート好き”の和臣だから嬉しい日であり、全く関係無い世の男性諸君からしてみれば速攻廃止して貰いたい文化だろう。
「夏樹さん、ヴァレンタイン好き?」
「んー…、普通かな…。有難いんですけどね、如何せん僕は恋人居てましたし、御返しとか面倒だったので受け取りません。」
御返し…。
そう云えば和臣、毎年、其れこそ幼稚園時代から此の歳迄途切れる事無く貰って居るが、一ヶ月後に何かした記憶は無い。
「其れに、僕男子校でしたし、学生時代は…、はは。」
「え?」
約三十年、一度としてヴァレンタインデーから迫害された事のない和臣だが、夏樹の言葉に矛盾する記憶を思い出した。
夏樹の言葉が正しいなら、和臣にも空白の時間が存在する。
今の一度も、チョコレートの事しか考えていなかったので考えた事無かったが、良く良く考えるとおかしい。
「俺さ…、中高一貫の男子校だったんだけど…」
「え?」
「あれ?あの六年間、何で毎年貰ってたんだ…?」
夏樹が言う迄疑問等持った事無かった。和臣の中でヴァレンタインは“チョコレートの日”であり、“告白の日”では無い。
抑に和臣、幼稚園時代に貰ったチョコレートが発端で、二月十四日は大好物のチョコレートが貰える日だとずっと思って居た。
中学時代も良く判っておらず、え?呉れるの?有難う!と意味も判らず笑顔で受け取った。
「え…?」
「中学時代が一番多い気がする。何でだ。俺、男子校だったよ…」
高校時代になると、合コンした他校の女子生徒から大量に貰った。なので高校時代の学校で貰うチョコレートの記憶は薄い。
唯、一貫校、高校三年の最上級生になった年のヴァレンタインは凄かった。卒業を控えている事と、生徒会長だった事が重なり、高等部の後輩は当然、中等部の後輩迄もが、高等部の生徒会室に犇き、大量のチョコレートを置いていった。生徒会室が甘ったるいチョコレートの匂いで占領され、いやぁ人徳って凄いなぁ、と和臣は上機嫌で、然し全く無縁の役員からはボコボコにされた。
ライチの甘さをゆったり舌全体に覚える夏樹は、首筋を掻いた。
此処迄間の抜けた天然が珍しかった。警戒心が低いのかも知れない。
「卒業の時、凄かったですか?」
「あー、そうだ、そう。凄かったなぁ。卒業証書以外全部強奪されたなぁ。寒かったぁ。ジャケット迄取るんだもん。
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