第2章
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八時開店だけど、どうせ貸切でしょう?早く来れるなら早く来て、と雪子から連絡受けたのは五時過ぎで、其の時和臣は会議室で、作戦を練っていた。
「如何やって切り出すの?客全員警察とか、流石に勘付かれるんじゃないの。」
「良いんだよ、知れて。其れで逃げるなら、もう烏だ。」
烏……黒。課長独特の言い回しで、白の場合は白鳥になる。
「啼いた烏は撃ち落とせ。」
今回の作戦は、武力に加納と本郷、心理頭脳に和臣を配置した。入り口を加納と本郷で固め、加納の寝技をも振り払い逃亡した場合、本郷が追い掛け、其の間に本部に連絡、の計画だ。
夏樹の足の速さは判らないが、本気を出した本郷から逃げ切れる一般人は先ず居ないと云って良い。
飢えた狼から逃げ切れる人間が、果たして何人居るか。足でも、書類上でも。
本郷から目を付けられ、逃げ切れた犯人を和臣は見た事が無い。此の逮捕力、本庁だと異例の速さで昇進して行くだろう。唯、本郷は従順では無い。絶対に自分の信念を曲げないのだ。上から押さえ付ければ付ける程本郷は反発し、牙を剥く。加えて短気、其の一言に尽きる。
何とも無い事で直ぐに癇癪玉を破裂させ、其れを止めるのが井上。
本郷の事情聴取は、御前聞く気無いだろ、と言いたい程、本郷が怒鳴って居るだけだ。結局何が言いたいんだ、もっとハキハキ話せと恫喝に近い。女でも容赦無く、本郷の態度に泣き出そうものなら、泣く前に話せ、泣いて解決するなら枯れる迄泣いてろ、と云う。
なので極力事情聴取を任せない様するのだが、井上が聞いて居ても、何故か横に立つ本郷が、遅い、と怒鳴り出す。
凶悪犯相手になら本郷程適材人物は居ないが、被害者相手には向かない、何とも扱い難い男だった。
唯、殺人を繰り返す奴は滅多に居ないが、強盗や猥褻行為を繰り返す犯罪者達には相当恐れられて居る。取調室に本郷が姿現そうものならがたがた震え出し、悲鳴を発する。中には己のマゾヒスト欲を満たしたいが為、本郷に怒鳴られたいが為、猥褻行為を繰り返す変態も居る。被害者も、其れに付き纏われる本郷も堪ったものでは無い。罵声されるのが快感の変態なのだから無視すれば、と指摘してみたのだが、端正な其の顔が無言で睨み付ける行為も変態には充分な興奮要素だった。勃起した其れを見た瞬間癇癪玉は弾け、手を挙げる事が出来無い本郷は壁を蹴り乍ら罵声と奇声を繰り返した。
相手にしたく無い、と一度本郷の代わりに和臣が取り調べたが、刑事さんじゃ興奮しない、と拗ねられた。其れを聞いた本郷が、汚物を見る目で部屋を覗いたのだから此の変態は歓喜した。
御前は一度、死んだ方が良いと思う、俺の為に…。
刑事の云う言葉で無いのは判って居たが、本郷の云う通りだった。
もう逸その事、暴力団を相手にする、捜査四課或いは本庁の組織犯罪対策部にでも行けば良いのに。そう、和臣は思って居る
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