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アーチャー”が”憑依
十二話
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子供とはいえ人が落下しているのだ。発生する音は大きい。だが、もう遅い。とはいえ、最優先なのは近衛を無傷で助けることだ。攻撃を加えることも考えたが、欲張らずに近衛を奪い取ってその場を離れる。そして、落下してきた杖をつかみ……

――風花風塵乱舞!

二酸化炭素の風を発生させ未だ猛威をふるっていた炎を吹き飛ばす。

「お嬢様!」

「先生、上手くやったようだね」

「ああ。だが、もう一仕事残っている」

やってきた真名に近衛を預け、此方を睨みつける術者を見据える。逃しては、また行動を起こされる。ここで、奴を捕まえる。伏兵を考慮し、真名を近衛の護衛に徹底させ刹那を遊撃の位置に置く。そして私は術者へと一直線に駆ける。

「ここは通しませんえ〜」

頭上から襲いかかる少女。その手には小太刀程のサイズの刀と更に短いサイズの小刀が握られている。だが、この少女に構うことは無い。なぜなら……

「させるか!」

優秀な仲間が居るからな。

「くっ! 猿鬼、熊鬼!」

「この程度で!」

私を止められると思うな! デフォルメされた猿と熊の見た目をした式を一撃で消滅させる。奴の表情から察するに、最早手札は無い。そう確信の元に、踏み込もうとした。だが、急に感じた寒気に全力でその場から飛びのいた。

――障壁突破、石の槍

術者の目前、先ほど私が踏み込もうとしていた位置に石の槍が放たれた。もし、あのまま踏み込んでいたら串刺しにされていただろう。

「かわされたか」

術者の横に何時の間にか存在していた水たまり、そこから人が姿を現す。無表情な顔、かつての私とはまた違った白い髪。どこか機械的な雰囲気を纏う少年が、そこにいた。

「ここは引こう。どうにも旗色が悪いようだ」

「し、新入り!? 何でここにおるんや! それに、引くやて!?」

「あれを」

スウっと上げられて指先が指し示すのは刹那と敵の仲間と思われる少女。

「はあ!」

「あ〜れ〜」

目の前の敵から注意を反らさない様に眼を向けると、刹那が少女を弾き飛ばしていた。ダメージは無いようだが、実力は今の所ほぼ互角だろう。

「千草さんも善鬼と護鬼を失っているし、此方が不利だ」

「そう、やな。引くんや!」

できれば、ここで捕えておきたい。だが、目の前にいる少年がそれをさせてくれなかった。無機質な感があるためエヴァには及ばないが、間違いなく一級品の威圧感。おそらく、やり合うとなれば他の事に気を回す暇などないだろう。
私達は、敵を見送ることしかできなかった。
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