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アーチャー”が”憑依
十二話
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ちを叩きこむ。だが、この手応えは!

「先生! それは式だ!」

やはり、術者と近衛に似せた精巧な擬人符。真名の魔眼で確認する間もなかったため、してやられた。だが、私はホテルから出た術者から眼を決して離さなかった。さすがに電車に入った時は遮蔽物で視界から外れたが……少なくとも電車から出た人影はなかった。ならば、まだ術者は電車の中にいるはずだ。

「……ださん」

「!」

「ウチを逃がして」

「気をつけろ!」

「おくれやす」

前方の車両から流れ込む大量の水、水、水。どうやら、前の車両にある札から大量の水が流れ出しているようだ。そして、そのもう一つ先の車両に、ほくそ笑む術者の姿。

(舐められている、な)

守るべき対象を奪われ、敵に侮られる。こんな事は、何時以来だ? 少なくとも、私がエミヤシロウとして死んだ時……あの頃は既にこんなことはなかったはずだ。ならば、今は? 今は、あの頃と同じだと言うのか? 叶うはずの無い理想、偽物の理想を掲げていたあの頃と……

(ふざけるな!)

正義の味方などと言うふざけたものを再び目指すつもりなどない。だが、あの頃の衛宮士郎と同じだと言うのが、許せない。

(お、おおおおおおおお!)

血が滲む程に拳を握りしめ、力任せに窓を殴りつける。水の抵抗によって遅くなる筈の拳を、過剰なまでに魔力の密度を高めた身体強化で無視する。体が込められた魔力の多さに悲鳴を上げるがそれも無視。もとより、それで折れるほど軟弱な精神では無い!

「げほっげほっ」

「助かったよ、先生。だが、先ほどの魔力行使は暴走に近い。今後は止めた方がいい」

「大丈夫だ。それより、どうやら目的地に到着のようだぞ」

深夜といえども静まり過ぎている駅。先ほどの駅と同じく人払いの呪符が張ってあるのだろう。敵を眼で追いながら、我等も後を追う。そして、駅から出てすぐの長い階段の中腹で術者が待ち受けていた。

「まさか二枚目のお札を突破してくるとは。そやけど、それもここまでですえ」

指にはさまれているのは呪符。このタイミングで切ってくるということは、敵の持ち札の中でもそれなりの位置にあるものだろう。私は二人に一瞬目配せすると、杖に跨り上空へと飛翔する。

――三枚符術、京都大文字焼き!

「くっ!」

「これは、中々だな」

上空にも届くほどの熱量を持つ巨大な大の字の炎が階段に顕現する。だが、それが上手く隠れ蓑になったのか、私が術を逃れたことにはまだ気付かれていないようだ。

「ん? 何や一人足りへんような……」

仕掛けるなら、今! 杖から飛び降り虚空瞬動を使って超高速で落下していく。敵はまだ、気付いていない。これなら!

「なんや音が……これは、上!?」

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