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歪んだ愛
第2章
―5―
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「其れからはもう、来なくなったな。身体が弱いのはゆりかちゃんだったし、喘息も落ち着いたから。」
「東条まどかは、付き添いで来てただけ…?」
和臣の言葉に医者と看護師は頷き、和臣は其の侭手帳にペンを走らせる加納と見合った。
「活発なお嬢さんで。」
加納のフォローに三人は乾いた笑いしか出なかった。大先生は咳払いし、ゆりかのカルテを見た。
「ゆりかちゃんは反対で、物凄く大人しい子だった。まあ喘息もあったし、お母さんが過保護だったね。まどかちゃんは放っておいても勝手に育つでしょー、みたいなね。中学になると、完全に二人は別物になったね。」
三人は口を揃えて、ゆりかは大人しかったと云う。
腰迄あるロングヘアーを二つ結びにするゆりか、男子の校則を守ってるのか?と聞きたい程短髪だったまどか、静かに歩くゆりかに反し、バッサバッサと重たいスカート鳴らし大股で歩くまどか。友達も、余り居ないゆりかの一方で、まどかは何時も男子生徒と連んで居た。其の友人の男子生徒と制服交換したったわー、と学ラン姿でゆりかの付き添いに来た時は、本当に男の子だと勘違いした。
「あんまりに男っぽいから、此の子、性同一性障害かなんかじゃないかって思った。」
「そんなに?」
「活発の度合いが、男の子だったんだよ。絶対スカート履かなかったしね。」
「スカート履かすと痙攣してたわ。なんで僕にー!…嗚呼そうだわ、一人称が僕だった。だから大先生が疑ったのよ。」
「そうそう、そうだわ。だから聞いたんだ、君は自分の性を如何認識してる?って。そしたら、僕がこうなってるのはゆりかの為で、母さんの為だ、って。」
和臣はゆっくりと加納に向き、頷き合うと病院を後にした。
駐車場に戻った二人は車内で黙っていた。手帳を見る加納は腑に落ちない顔で眉間を掻く。
「如何した、なんか引っ掛かるか?」
「いいえ?唯、東条まどかはワタクシの最も嫌うタイプだな、と。」
「刑事がそんな事云ってたら仕事にならんだろう。」
「妹にそっくりなのですよ。」
「御前、妹居るのか。」
「ええ、居ます。大嫌いです。顔も見たくない。」
同じに妹の居る和臣は如何答えて良いか、鼻を鳴らした。
顔を見たくない程嫌いだが、辛い事に妹はそっくりだった。鏡を見る度嫌でも妹を見てしまう結果となる加納は、鏡が大嫌いだった。
家に鏡が無い、と迄言い出し、如何やって髭剃ってるんだ、と聞くと、勘と手触り、と危なっかしい。
「そんな嫌ってやるなよ、妹は御前の事好きかも知れないだろう。」
和臣の言葉に加納は、此の世の終わりを見た様な、蛞蝓の交尾を見た様な目で和臣に向いた。
「何の拷問ですか。彼奴がワタクシを好き等。地球外生命体から言い寄られた方がマシです。」
「そんなに怒らないで下さい、フリーザ様。」
「お黙りなさい、ザーボンさん。」

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