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歪んだ愛
第1章
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案外あっさり引きましたね、とハンドルを握る加納は呟いた。
捜査権を戻された和臣達は、東条まどかの恋人である夏樹冬馬の居場所を聞く為、ゆりかに約束を付けた。
妹の恋人を仔細知っているか微妙だったが、まどかに夏樹を紹介したのは他でも無いゆりかだった。居場所だけ聞こうと思ったのだが、夏樹の人物像を把握する為ゆりかにも話を聞く事にした。
最初は和臣、約束通り井上を東条宅に行かせ様としたのだが、木島さんじゃないんですか…、と和臣が来ない事にゆりかが電話越しでも判る落胆を見せた。然しだからと云って、そんな事で絆されも揺れ動かされもしない和臣は井上達に指示を出したのだが、美女があんたを御指名ならあんたが行けよ…、美女に御願いされちゃ黙るしかねぇ…、と和臣を行かせた。
本当に、木島は女にモテる。此れでシスコンの変態じゃないなら完璧なのにな。
課長のニヤつく顔から逃げる様に和臣は加納を連れ、東条宅に向かった。
「何が。井上が?」
「いいえ、親がですよ。」
「署長が警視正だからだろう。」
「嗚呼、成る程。」
捜査権が何処に行こうが、正直和臣は興味無い。管轄内であった事件を処理するだけ。所轄刑事だけで処理出来る事件に興味は無い。だからと云って、本庁総出で動く事件も好きでは無い。
大きな仕事は親に任せ、小さな仕事をゆっくりする、其れで手厚い保障があるのだから其れで良い。
総勢三十人の捜査一課、其の全員が其々の事件でゆっくり動いていれば良いと思う。何、此の管轄、三日に一回位しか一課が動く事件は無いのだから。盗難の三課は毎日書類整理に追われて居るらしいが。
一課の扱う、殺人、強盗、性犯罪が其々一件づつ毎日起きていたら、大変治安の悪い地域に認定される。
和臣は思う、日本最大の歓楽街を管轄に持つ署にだけは絶対に行きたくないなと。
静かに流れる景色、住人の性格が想像出来るゆったりとした空気、其の中で起きた非日常的な出来事。自分は其れを処理するだけ。
「着きました。」
戸建てが多い住宅街で困るのは一つ。自宅に広いガレージを所有する家が多い為、コインパーキングが少ない。東条宅から一番近いコインパーキングが歩いて五分の場所にある。最初来た時は其処に停めた。
先に和臣が降り、インターフォンを押す。待ち構えて居たのか直ぐにゆりかのソプラノが聞こえ、びくっと驚いた和臣に加納が運転席で笑って居た。
「おやまあ、ふふ。レイディキラーでらっしゃる。」
「喧しい。」
『え?』
「いや、何でも無い。」
『あの、御車ですか?』
「嗚呼。」
『あ、なら内の車庫開けます、其処に停めて下さい。父の分が一台空いてる筈ですから。』
ガラガラとガレージのシャッターが上がり、通り、一台のスペースがあった。車を眺めて居た和臣は、加納と一緒に振り向いた時又驚いた。
ゆりかが玄関か
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