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歪んだ愛
第1章
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クリームでもシャーベットでも、ジェラートでも無い棒付きの其れを食べる男は、東条まどかの写真を眺めた。
「うわぁ、ブスだなぁ。」
「別嬪の屍体なんて見た事無い。」
まったりとしたピスタチオのジェラートを食べる菅原は、屍体は総じてブス、と云う男の脛を蹴った。
「科学捜査研究所って、此処で良いのか?」
入り口から聞こえた声。振り向いた菅原とは反し、男は食べ終わった棒をゴミ箱に投げ入れた。
「そ。」
垂れた目を窄め、菅原は答えた。
「世谷署の木島だ。」
「加納です。」
「おお、待ってたわ。」
警察手帳を見せるが菅原に興味は無く、あるのは加納の持つ東条まどかの資料だけである。
がさり。
小さな冷凍庫から新たに氷菓を取り出した男は、耳に入った名前にゆっくりと入り口に顔を向けた。
「木島…?」
吊り上がる細い眉、切れ長の目、高い鼻梁、薄い顔付きに釣り合わない厚い唇、バランスが取れるのは顎がしっかりとするから。
黒縁眼鏡の奥で驚きに揺れる目に和臣は首を捻った。
「ん?」
「木島和臣、だよな…?」
「そうだけど。」
御前は?
そう繋げ様とした時、はっきりと男の口角が釣り上がり、尖る犬歯を見せた。歯をなぞる赤い舌に和臣の背中は凍り付いた。
「は…は…」
さっと唇から血の気が引き、薄い唇が一層縮んだ。
長谷川(はせがわ)…」
名前を云うが早いか、がっしりと首を固定され、長谷川の身体に染み付く薬品の匂いに和臣の奥歯は無意識に鳴った。
「覚えてたか、嬉しいよ、和臣…」
忘れろという方が間違って居る。和臣の人生で長谷川程強烈な印象…其れも恐怖を植え付けた相手は居ない。
白衣のポケットから銀色のペンを取り出した長谷川は、其の侭先を恐怖で固まる和臣の耳の下に当てた。
強烈な痺れと痛みが来た和臣はガクンと膝を付き、此の電気オタク…、と弱々しく長谷川を睨み付けた。
「エレキテルー!エレ・キ・テル氏最強なり!」
「エレ・キ・テル氏諸共公務執行妨害で逮捕するぞ!此の奇天烈大百科野郎!」
両腕突き上げ、エレキテル、等と喚く長谷川を、珍獣を見る怯えた目で加納は見詰めた。
他人に電流を流し笑う等、精神構造を疑う。
「しょ…、傷害罪に当たりますよ、其れは!抑…、凶器ですよ!渡しな……」
「……黙れ。」
ペン本体を真ん中から回した長谷川は、電圧を上げたペン先を加納の顎下に突き刺した。脳天に向かい電流が貫き、目の奥が熱くなった。
和臣以上の電流を受けた加納は長谷川を見た侭膝を付き、声無く床に倒れた。
半目で涎垂らす加納を足先で突き、威力を増した長谷川の精神構造に和臣は恐怖した。
「…進化し過ぎだろう…、エレ・キ・テル氏…」
「科学は日々進化するのだよ、木島君。」
高らかに笑う声、菅原は暢気に鞄を開いた。
「わいのジープ、格好
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