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歪んだ愛
第1章
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東条まどかの分析を、警視庁の科学捜査班に回したと朝一に聞いた和臣達はうんざりした。
確かに行き詰まって居たのは確かだが、此れで捜査権が本庁に移動した。面倒な初期捜査を子に押し付け、イイトコは親が奪う。
「かーぁ、又かよ。」
東条まどかの自宅に行こうと決めて居た井上は、いきなり奪われた楽しみに紫煙を吐き捨てた。
「まあ良いじゃないか、仕事しないで給料貰えるんだから。」
課長は一人暢気に笑い、何時もこう、親が出て来ると此れ幸いと捜査権を渡す。
親に媚び売っている訳では無い、唯単に仕事をしたくないのだ。和臣達と違い現場を回る訳でも無く、一日を、此の精神科のカウンセリングルームの様な場所で一人過ごす課長は、全てを諦めて居る。
「ドドリア、御前に会いたかった…」
色目使われたら嫌味で返してやろうと思って居ただけに、和臣は落胆する。
「其処で、だ。」
東条まどかの資料を和臣に渡した課長は、其の侭ドアーを指す。
「木島、御指名だ。本庁に此れを届けに行って呉れ。」
「…御冗談、でしょう…?」
課長からの指示に反論見せたのは他でもない加納。和臣が動くとなったら加納も動かなければならない。
刑事の基本が二人一組のコンビ体制で、相方が動くとなると自分も動く。指示されたのは和臣で、依って加納も動く形になる。
和臣が行くなら何処にでも行くが、本庁だけは絶対に行きたくなかった。総監を殴った男として加納は相当嫌われて居る、当然ではあるが。群れの決まりを守らず追放受けた加納、又あの視線を貰うのかと唇を噛み締めた。
「渡すだけ、俺だけで良い。」
青白い肌を一層青くさす加納の肩を叩き、和臣は苦々しく笑った。
「其れがなぁ。」
課長は、肩から流れる三つ編みに結われた髪を撫で、眼鏡の奥にある野心秘めた目を光らせた。
「法医の先生が、話を聞きたいって。」
此の状態で和臣だけが動けばコンビ体制を破棄したと見做される。何がなんでも加納を本庁に出向かせ様とする親の浅はかな意識が窺えた。
「…本郷。」
「はい。」
「御前が来い。」
此処に入った時、本郷とコンビを組んで居たのは和臣だった。横暴な和臣に誠実な本郷、水と油の関係で、コンビを組んで半年後、本郷の胃に穴が空いた。
指名された本郷は俊敏に机の引き出しから胃薬を取り出し、規定以上の錠剤を手の平に乗せ、無言で口に放り込んだ。すかさず井上がミネラルウォーターのペットボトルを差し出し、一気に半分を飲み干した。
「大丈夫です…、行きましょう。」
ぎりっと、胃が痛んだのは気の所為だ、そう本郷は頷き、胃薬とペットボトルをしっかり握った。
「…井上、俺と動いてみないか…?」
「御冗談。俺は龍太と女以外では動かねぇよ。」
飄々と云って退ける井上。何かあったら直ぐ俺に連絡しろよ、と迄井上は云い、今にも胃痛で吐血
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