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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶 〜 帝国歴487年(二) 〜
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帝国暦 487年 1月 7日 オーディン リヒテンラーデ侯爵邸 エーレンベルク元帥
国務尚書リヒテンラーデ侯が部屋に入って来た。急いで立ち上がり頭を下げた。
「夜分、御自宅にまで押しかけ申し訳ありません」
「気にする事は無い。卿らも忙しい身、内密にとなればこのような形を取らざるを得ぬ。それで用件は何かな? 軍務尚書、統帥本部総長」
侯がソファーに座る、それを待って私とシュタインホフ元帥も座った。
国務尚書の服は普段着でも部屋着でもない、今からでも出仕出来るような正装だ。戻って来たばかりなのか、それともこれも公務と考えて衣装を整えたのか。ドアが開き若い女性が紅茶を持って入って来た。テーブルに紅茶を置くと一礼して部屋を出て行った。角砂糖を一つ入れスプーンでかき回す、シュタインホフ元帥はレモンのみを入れ、リヒテンラーデ侯はスプーンでかき回してからミルクを入れた。目でマーブルの模様を楽しんでいる。
「宇宙艦隊司令長官の人事ですがミュッケンベルガー元帥をその地位に留めたいと思います」
私が切り出すと“フム”と頷いた。視線はまだカップに落としたままだ。
「ミュッケンベルガー元帥は戦場で指揮を執れるのかな、それが出来ぬと見て辞任を申し出た筈だが」
「いえ、戦場には出ません。国内に在って内乱の勃発を抑えます。副司令長官を新たに任命しその者を戦場に送りたいと考えております」
視線を上げ“なるほど”とリヒテンラーデ侯が頷いた。
「そういう事ですのでミュッケンベルガー元帥の辞表の受理は……」
「絶対に認めるな、そういう事か」
「はい」
リヒテンラーデ侯が大きく息を吐いた。はて、どうも気に入らぬようだ。シュタインホフ元帥に視線を向けた、彼はリヒテンラーデ侯を窺うように見ている。どうやら私と同じ感触を得たらしい。
「良いのかな」
「と言いますと」
「ミュッケンベルガー元帥が心臓に異常が有るのは貴族達も知っていよう。あの連中、故意に元帥の心臓に負担をかけ元帥を潰しに来るやもしれんぞ。それが無くても事が起きた時、発作で倒れたらどうする。混乱に拍車がかかるだけではないかな?」
「……」
リヒテンラーデ侯は反対か。確かにその可能性は有るが抑止力としては十分ではないのか……。
「どうも卿らは分かっておらぬようだ」
侯が嘆息を漏らした。分かっていない? 何をだ? シュタインホフ元帥に視線を向けた、彼も困惑している。
「今大事なのは帝国を混乱させぬ事、内乱を防ぐ事であろう。司令長官の人事など二の次で良いわ」
「失礼ですが我らも内乱を防ぐ事が大事と理解しております。確かにミュッケンベルガー元帥の病を軽視したかもしれません。しかし内乱を防ぐためにミュッケンベルガー元帥を司令長官に留任させてはと思ったので
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