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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
追憶  〜 帝国歴487年(二) 〜
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す」
シュタインホフが反論した。司令長官の人事を二の次と言われた事が面白くなかったのだろう、多少ムッとしている。だがリヒテンラーデ侯が冷たい笑みを浮かべた。

「勘違いしてはおらぬか、前回帝国が内乱を回避出来たのはミュッケンベルガー元帥の力ではない。ヴァレンシュタイン少将の働きよ、違うかな?」
「……」
「内乱を防ぐと言うのなら先ずはヴァレンシュタイン少将の処遇を決めるのが先決であろう。降級させたままでは貴族達が勘違いしかねん。それでは内乱を誘発させるようなものだ」

国務尚書は実績のあるヴァレンシュタイン少将を国内治安の担当者にすべきだと考えている。ミュッケンベルガー元帥は未知数であり健康にも不安が有ると見たか。ミュッケンベルガー元帥の補佐という形で使えば良いと思ったが……。リヒテンラーデ侯が紅茶を一口飲んだ。

「極端な事を言えば軍はイゼルローン回廊から向こうには出ずとも良いのだ。勝てずとも負けなければ帝国は滅びぬ。だが一旦内乱が生じれば帝国を二分、三分する争いとなろう。反乱軍もここぞとばかり攻め寄せて来る筈だ。そうなれば国が傾きかねぬ、卿らとて無事では済むまい」

否定は出来ない。勝てないなら負けないようにするのも用兵家としての力量だ。そして内乱が起きればとんでもない混乱が生じるのも事実、反乱軍が付け込むのも間違いは無い。優先順位を間違えたか……、いや間違えては居ない。問題は司令長官を任せられる適任者が居ない事だ。だからミュッケンベルガー元帥にとなってしまった。だから国内の治安を任せろとなってしまった。切り離さなさければなるまい。紅茶を一口飲んだ、もう一つ砂糖を入れれば良かった。

「国務尚書閣下はヴァレンシュタイン少将を中将に戻すべきと御考えですか?」
シュタインホフ元帥が問うと国務尚書が“さて”と言葉を発した。
「私には軍人の世界は良く分からんのだが今回の戦い、ヴァレンシュタイン少将の果たした役割というのは大きいのかな。色々と問題を起こしたとは聞いているが」

「大きいと思います。彼の働き無しでは帝国軍の勝利は難しかったでしょう。場合によってはとんでもない大敗を喫した可能性も有ります。それは万人が認めるところです。しかし軍の統制を乱したのも事実。それ故一階級降級させ謹慎させております」
私が言うとシュタインホフ元帥が大きく頷いた。そしてリヒテンラーデ侯が“フム”と頷いた。

「軍の統制を乱した故、罰は下した。ならば功を上げた以上賞を与えねばなるまい。問題はその賞の与え方よな。少将の立場を強める与え方でなければならぬ」
「……」
「ミュッケンベルガー元帥が退役すればヴァレンシュタイン少将は後ろ盾を失う、少なくとも貴族達はそう思うであろう。その辺りを良く考えるのじゃな」
なるほど、中将に戻すだけでは足りない
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