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歪んだ愛
第1章
―2―
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た。其れを聞いた井上が、マレフィセントかよ、と呟いたのを覚えている。
だから仮面に見えた。
一方で此のゆりかはブラウンのアイラインとベージュのアイシャドウ、リップは仄かなピンクのグロスだけだった。服もふんわりとした柔らかい色合いで、雰囲気と重なり、如何にもなお嬢様。
和臣の苦手とするタイプだった。
一卵性双生児という事は、全く同じ作りの顔だろう、ゆりかに同じ格好をさせても嗚呼はならない。性格が完全に正反対なのだろう。
「オレンジバレー…」
ゆりかを観察していた和臣は、優雅にティータイムを楽しむ加納に視線を向けた。
「そうです。わあ、凄いなぁ、刑事さんって、紅茶も当てられるんですね。」
胸の前で手を合わせるゆりかは人懐っこい笑顔を向けた。
「いえ、ワタクシは唯単に紅茶党なだけです。」
興味無さそうに加納はソーサーにカップを置き、其の侭テーブルに置いた。
「俺、珈琲党だけど、豆なんて判らんぞ。」
「キリマンジャロとフレンチの違い位判りますでしょう。」
「当たり前だろう。」
「同じですよ。」
「お変わりいっぱいありますから、じゃんじゃん飲んで下さいね!」
「飲み放題か。」
「そうです、飲み放題です!然もただ。」
「良い店だな。」
「でしょう、刑事さん!」
「御言葉は有難いのですが、ワタクシ、此の手のタイプは苦手なのですよ。」
「あ、そうなんですか…」
しょんぼりと俯いたゆりかは、窶れる母親の手を握り閉めた。微かに、母親の口角が緩んで居る。
「東条まどかは、そんな性格だったのか…?」
和臣の言葉にゆりかに顔は陰り、小さく頷いた。
母親が笑った理由は、此の会話では無く、此の会話で取ったゆりかの態度。
ゆりかの取った明るい態度に母親は東条まどかを思い出しはにかんだ、と云う事だ。
「まどかは…」
此れがゆりか本来の性格なのだろう、静かに話した。
「私とは正反対でした。活発で、前向きで、人に愛されて居ました。就職も、私は何社か落ちた後直ぐに諦めてしまったんですけれど、まどかは受かる迄活動してました。」
「ゆりかさん、でしたか。何処かに御勤めですか?」
職場を聞いた加納にゆりかは首を振り、無職である事を告げた。
此れ以上何も聞けなくなった和臣は手帳を仕舞い、加納を見た。
「まどかさんの御部屋、見せて頂く事は出来ますか?」
ゆりかは母親の顔を覗き、母親からの許可が出たのでゆりかは案内した。
二階に案内され、此処で一度ゆりかは面白い行動をした。
何故か自分の部屋を開け様としたのだ。
「此処が、まどかの部屋です。」
「ゆりかさんの部屋も見せて貰えるか?」
「え?はい。」
東条まどかの部屋とゆりかの部屋は隣合わせで、両方のドアーを開け二つの部屋を廊下から見ると、鏡に映した様に左右逆転に配置されていた。

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