第1章
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とした和臣は上体を止め、屈した腰を又態々伸ばした。
「御前、オタクなのか?」
「え…?いいえ…?」
素早くブリッジを撫で、俯き加減に顔を逸らした加納に和臣は眉を上げ、肩を揺らした。
「能面の癖に超合金ロボが好きとか傑作だ。」
「ですからね?違います。能面でもオタクでも…」
「此れ、サウンドウェーブって名前か?」
「違います。」
なんだ結局二人共オタクじゃないか、と立番は和臣の車に視線を向けた。
側面が所々汚れている。
一時間程前、此処に来た年長の園児が、和臣の車を見付けるなり「バンブービー!バンブービー!トランスフォーム!」と小さな足で蹴飛ばして居た。其の三十分後に交通規則の罰金を払いに来た男が、偶々目に止まった赤い車に怒りをぶつけていた。昨日も、誰かに八つ当たりされていた。
目立つって、大変だなぁ。
ベンツのエンジン音に立番は顔を上げた。
アレがトランスフォームしたら如何なるんだろう。やっぱ加納刑事だし、ディセプティコン側なのかな。やだー、怖い。
本郷の青い車、此れに赤いパトランプが付くと「オプティマス!」と少しワクワクする。此の時立番は、「行ってらっしゃいませ、司令官殿!」と全身全霊で敬礼し見送る。そして和臣の車、此れにパトランプが付くと、本当に変形しそうな勢いでエンジンが唸る。何時もは大人しいのだが、其れもバンブルビーに似るな、と思う。赤だが。赤だが、此れは“ビー”で良いのだ。赤い蜂なのだ。
「可愛いなぁ、ビー。」
ちょんちょんと指先で突くと、ライトが太陽光に反射し、立番は肩を竦めにんまり笑った。
立番はこうして毎日、駐車場に並ぶ車を見て妄想する。そうでもしないと暇なのだ。
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