序章
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トを木島は見た。
「…折れてる…」
「おやまあ、勿体無い。」
「高いのになぁ。」
折れていたのは、左の親指だった。
「木島刑事。」
「んー?」
ネイルアートを眺める木島に鑑識が、泥塗れの鞄を差し出した。中身は……すっからかんだった。ゴミの一つも無い。だったらもう鞄ごと持ち帰れば良いのに、そう思う。
「被害者の物なのか?」
「あ、木島さん、此れ、タグが付いておりますよ。」
加納の言う通り、内ポケットに安全ピンで半分切られたタグが付けられていた。
「新品。…袋は。何処のブランドだ。」
「コーチ、ですね。ほら。」
拭われた泥の下から見慣れたマークが現れ、コーチならもっとコーチらしくあの模様にしとけ、と泥塗れの元はサーモンピンクの鞄を木島は叩いた。
然し身元に近付く物ではある。都内にあるショップを一店一店回って行けば良い。大概はカード決済の女が多い、其れで身元は判る。現金だったら時間は掛かる。然し、何十万とする鞄を現金一括で買うとは、失礼だが此の被害者では考えられない。
全身に金が掛かり過ぎてる。
だからと云って、水の匂いはしない。
此れは刑事の勘だ。
其れに此処は戸建ての多い住宅街、マンションもあるが、とても若い娘が出せる金額では無い。大方実家暮らしのOLだろう、だから全身に金が使える。
「ま、死んだら意味無いけどな。」
木島は鑑識に鞄を渡し、首を鳴らした。
雨が酷い。
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