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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
10話 出立の兆し
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理》スキルを取った。戦闘終了後に時たまドロップする《食材》アイテムを売却以外で役立てようという理由であった。金銭的な収入で言えば隠しダンジョンの雑魚モンスターやネームドモンスター、隠しクエストの報酬で十分に稼げてしまうので、そういったアイテムはストレージの圧迫要因にしか為り得ず、あまりに圧迫が酷ければ捨ててしまうことだってあった。
 しかし、そこは流石ヒヨリといったところか。捨てるくらいなら食えるようにしてやると言わんばかりに躊躇なく《料理》スキルをスロットにブチ込み、余った食材を活用して見事に料理を作り上げたのである。無骨な丸焼きだったが、カップ麺も作れなかったヒヨリからは想像もつかない飛躍であった。リアルでも《料理》スキルが反映されるかは絶望的だが。
 それにしても、これでヒヨリのスキルスロットは《細剣》《裁縫》《料理》となり、戦闘用のスキルが細剣のみという忌々(ゆゆ)しき事態となっているのだが、戦闘においては殊更重大な問題が発生しないのが現状である。むしろ、無駄にあれこれ組み込むよりも《細剣》一本で進んだ方が強いかもしれない。やや絡め手向きである俺にとっては対照的とも言えなくもないスタイルだ。それだけに、俺が隙を作って、ヒヨリが攻めるという理想形が形作られたわけだ。

 ……話が逸れたので戻すとしよう。アルゴの目的を聞くのも大事だが、それに協力できるようならば力になってやるのも吝かではない。実質三十パーセントOFFで提供された情報の削られた利鞘も、アルゴからすれば馬鹿にならないはずだ。このまま利益摩擦が増大すれば申し訳なさで居た堪れなくなる。ここは核心に踏み込んでいくとしよう。


「もし暇だといったら、何て言うつもりだったんだ?」
「そこから先の返事次第ってとこダナ」


 用心深いな。遠慮がちとも見て取れるが、なおさら厄介事の類いなのだろうか。
 断るつもりこそないが、こうも警戒されては信用がないのではないかと自信を無くしてしまいそうだ。


「話してみろ」
「それは、了承と見ていいのカナ?」
「何を了承するのかは知らんが、世話になりっぱなしも悪いだろ」
「よく分からないけど、私も頑張るよ!」


 協力する意思を示し、アルゴは顎に手を当てながら暫し唸る。
 これでも信用されないのかと溜息が漏れそうになったところで、アルゴは何かに頷くと、覚悟を決めたように口を開いた。


「……実は、《迷い霧の森》でレアな黒エルフが出現するっていう情報を仕入れたんダ。けど、どうも眉唾なんだよナー」


 眉唾もなにも初耳だ。恐らく、NPC由来の情報ではなくプレイヤー間で語られたものではないだろうか。少なくとも俺の記憶では、第三層に出現するエルフ種のモンスターにはレアなものなんて見受けられなかった。キャンペー
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