暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第110話 おでん……温めますか?
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何百分割もした刹那の時間内で起きた出来事。
 そしてこの瞬間に俺の勝利は確定した。

 この安定の悪い状況から上方に向け能力を発動させる。当然、重力の軛より解き放たれた身体はパイプ椅子から離れ――
 次の瞬間!

「毎度、毎度、思うんやけどな、ハルヒ」

 せめて、一口頂戴ね、の一言ぐらいは掛けられないのか?
 無駄に戦闘能力の高さを誇示するかの如く、彼女の鼻先でハンバーグ弁当をゆらゆらと動かしながらそう言う俺。
 この時、世界はその色彩と音を取り戻して居た。

「何よ。一口ぐらい分けてくれたって良いじゃないの」

 何故か俺に見せる顔は不満げに口を尖らせたアヒルのような顔か、それとも不機嫌そのものの顔しか見せてくれない彼女がそう答える。
 その瞬間に閃いた彼女の右手がまたもや空を切ったのは……なのだが。

「どうせ冷たい弁当よりは温かい物が食いたいとか言う、ショウもない理由で俺の弁当を狙ったんやろうけど」

 そう言いながら、長テーブルの上に置いたままにして有ったレジ袋を掴み、それをハルヒの前に差し出した。
 その袋をやや寄り目にしながら見つめるハルヒ。

「流石に一個しかないハンバーグはやれんけど、コッチならかめへんで」

 その袋の中身は……。

「おでんか――」

 偶には役に立つ事も有るじゃないの。そう言いながら汁のたっぷりと入ったおでん入りのトレイを取り出すハルヒ。
 尚、常人を越えた戦いまで繰り広げ、散々勿体を付けて差し出したこのおでん……なのですが、当然のように皆で食べられるように余分に買い込んで来た代物。

 故に、

「みくるちゃん、お茶の準備が終わったらこれを温め直しましょう」

 ……と言う形に納まる訳。
 まぁ、何にしてもみんな通常運転中と言う事でしょうか。



「それで、さっきの話の続きなんだけど……」

 お茶の準備が終わり、何処から持ち込んで来ていたのか判らないカセットコンロに掛けられた鍋の中で温め直されているおでんを見つめる何時ものメンバー。
 尚、モブの男二人。妙に上調子で、はっきり言えば滑りまくって居るお調子男と、だんまりを決め込んだむっつり男。正直に言って、御近付きには成りたくない二人なのですが、こいつ等に関してはこの場には存在しては居ません。
 ハルヒ曰く、

「あんた等にミーティングなんか必要ないでしょ」

 ……と言う事で、文芸部兼SOS団の部室への侵入を拒否されたのでした。
 確かに、三試合を経過してアウトのほとんどはこの二人が産み出した成果だし、未だに捌いた打球もゼロ。守備に関しては貢献ゼロ。打撃に関してはマイナス要素のみ。これではハルヒでなくてもミーティングに参加する必要はない、と言われたとしても仕方がないで
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