第6章 流されて異界
第110話 おでん……温めますか?
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はない。
少なくとも競馬馬の如き視野の思考しか持ち合わせていない人間よりは、余程マシな考えに行き付く事が可能でしょうから。
「なんと一年生同士の対戦」
一年九組。一年の理数系の特別進学コースの人たちですよ。
朝比奈さんの説明を右から左に聞き流す俺。何故なら、このチームが……と言うか、俺や有希たちが本気に成れば、メジャーリーガーがやって来たとしても負ける訳はないので。
確かに、進学コースの特別クラスの生徒と言う事はそれなりに頭も良いし、球技大会の決勝に出て来ると言う事は運動能力にも秀でているのでしょうが、それは飽くまでも人間レベルでの話。俺たちはその向こう側の存在ですから。
しかし……。
その朝比奈さんの言葉を聞いた瞬間に発生する緊張した雰囲気。いや、これは周囲の雰囲気が変わったと言う訳ではない。これは多分……。
何時の間にか俺の右側に並んでいた紫の髪の毛の少女を見つめる俺。
そして次の瞬間、俺の向けた視線と彼女が俺に向けていた上目使いの視線が交わる。普段通りのメガネ越し……そして、何故か未だにキャッチャーマスクを付けたままの彼女と。
一瞬、何かの冗談か、とも思ったのですが、流石に有希がそんな笑いを取る為の冗談など行う訳がない、と思い直し――
「何か心配な点でもあるのか、長門さん」
敢えてキャッチャーマスクに対するツッコミも入れずに、そう問い掛ける俺。尚、ふたりっきりの時ならばマスクを外してやってから問い掛けるでしょうが、流石に今回は衆人環視の中での状況ですからそれもなし。
それに、その方が深刻そうな会話を交わしているように周りから見えないとも思いましたから。
しかし……。
「問題ない」
本当に小さく首を左右に動かした後に、そう俺にだけ聞こえたら十分だと言う大きさの声で答えを返して来る有希。
但し、それと同時に、
【後で話がある】
……と【念話】で伝えて来る。
相変わらずかなり緊張した雰囲気。普段はあまり存在を感じさせない彼女が、この時は何故か強く感じさせている。そんなかなり異常な状態。
「それじゃあ、部室でお昼にしましょう」
そこで決勝戦のミーティングもやるから、今日は学食に何か行ったらダメよ。
振り返ったハルヒが、俺の方を見つめながら何か勝手な事をほざいたような気がしたのですが……。
ついでに、人数合わせの為にかなり我慢をして仲間に加えたモブ二匹が、俺は弁当など持って来ていないぞ、と騒いでいたような気もしたのですが……。
しかし、今の俺に取ってはそんな他愛のない日常に分類される会話など右から左。何か異常事態が起きたのか。それとも起きる兆候を有希が感じ取ったのか。
その事の方が余程、重大事で有っ
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