暁 〜小説投稿サイト〜
ワンピース〜ただ側で〜
番外17話『デリカシー』
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ナミがベッドに顔を伏せながら呟いた。
 たしかにルフィやゾロについて行った先で不快な目にあったのは事実で、彼女が普段よりも苛立ちを抱えていたことも事実だった。ハントとまだ恋人になりたての関係だというのにハントがいきなり自分以外の女と一緒にどこかへと繰り出していたことでいきなりカッとなってしまったこともまた、事実。

 だが、かといっていきなり本気でハントの頬をたたいて、その場から逃げ出してしまうほどのことだったかと問われれば、彼女自身でもその答えが見つからない。
 そもそもハントは男女間の問題についておそらくルフィばりに鈍いであろうことはこれまでの航路でわかっていたこと。ハントとロビンが一緒に出掛けた、というよりもロビンが一人で行こうとしていたところにハントがくっついて行った、という方がどうせ正しいのだろう、ということもナミはわかっている。

 けれど、島次第ではハントと二人でデートに行きたいとか考えてワクワクしていた――この島に着いた時点でデートは無理だという気持ちが強かったし、実際にハントにはルフィとゾロのお目付け役について行ってもらおうと思っていたことはまた別問題として――気持ちや、せめて『一緒に行かないか?』とか声をかけてくれてもいいんじゃないだろうかという気持ちが重なり合ってナミ自身でも驚くほどの爆発を起こしてしまった。

「……はぁ」

 ハントがナミのことを好きで好きでたまらないのと同様に、いや、もしかしたらそれ以上にナミもハントのことを好きで好きでたまらないのだが、ハントとこの先、本当にずっと一緒にいられるかどうかについての不安を覚えてため息を一つ。
 だが、すぐに考え直したのか、首をぶんぶんと振って「とりあえず、私が謝んないとだめなのかな」と呟いてベッドから立ち上がる。

 ハントのことだから今もなお訳が分からずに甲板で混乱しているのだろう。それを想像して、小さく笑う。

「……惚れた方が負けって本当なのね」

 どこぞで読んだ本に載ってあった一文を実感して、自身でつぶやいた言葉が恥ずかしかったのか少しだけ顔を赤くして歩きだ――

「ナミ!」

 ――階段扉が大きな音とともに開け放たれて、その勢いのままにハントが必死な顔で部屋へと入ってきた。

「ハン――」

 凄まじい勢いで現れたハントに、ナミが目を丸くさせたのもつかの間、すぐに先ほどいきなり頬をたたいてしまったことを謝ろうとして、だが「――ごめん!」と、ハントによって先に謝られたことでそれが中断された。

「俺がロビンと二人でどっかに行って、ナミがどういう気持ちになるかとか……全然わかってなかった」
「……え」

 呆然としていたナミの目が驚きに見開かれた。まさかハントがそういうことを察せるとは思っていなかったからだ。


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