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【短編】遊戯王ARC-V −舞網市、激闘につき−
決闘の食堂
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ら、君をその水場にご招待したんだ」

 渾身の力を込めたバーグだったが、倒れ込んだままの姿から動くことは出来なかった。いや、正確には、足場が水で滑って身動きすることが出来なかった、か。少しでも動こうとすれば、その瞬間に足が水に絡み取られ、その者の動きを奪い転び倒す。

「蛇口を捻った後の水場は、大変滑りやすくなっております。お気をつけください」

「…………!」

 バーグもそのことは知っていた。故に相手の妨害を受けないよう、《カレー・ポット》で未知夫の動きを止め、トマトモンスター三体によるトマトスケボーでの移動により、アクションカードを手に入れていたのだから。

 モンスターがいないバーグには、その水場からの脱出どころか、そこから動くことすら適わない。そして、手の届くところにアクションカードがある、などということがあるはずもなく。

「まさか、前のターンからこれを狙って……!」

 未知夫は四体のRCMモンスターにより、バーグを水場の近くから動かないようにさせていた。バーグが水場のアクションカードを取りに行った瞬間に、未知夫はこの勝ち筋を想定していたのかもしれない。

 かもしれない、などと仮定じゃなく分かることは――

「それじゃあ、僕のおもてなし無限ループを……じっくり受けてもらおうか!」

 ――もはやバーグに取れる手段は存在しない、ということか。

「《CM ヒヨコムギ》でダイレクトアタック!」

「ぐあぁぁぁっ!」

バーグLP1600→0

『決ぃまったぁ! 勝者、霧隠れ料理塾の茂古田未知夫選手ー!」

「ご来店ありがとうございました。またのお越しを」

 未知夫は深々と一礼すると、アクションフィールドが解除されていく。《CM ヒヨコムギ》の攻撃を受け続けたバーグを助け起こすと、そう言いながら笑い、ニッコリと白い歯を見せる。

 ……こうして一回戦を突破した未知夫は、二回戦を不戦勝という納得いかない結果に終わりながらも、ベスト16となり本戦へと進出する。ペンデュラムカードの争奪戦――その裏に隠された、異世界との戦争の始まりへと。

 今までの自分に足りなかった、『あと一工夫』を追い求めながら。

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