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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月一日:『“妹達”』
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食いながら満面の笑みを浮かべる……紫と白の矢絣(やがすり)模様の大正の女学生風味な、夏用に紗で織られた裲襠(うちかけ)を羽織り、螺鈿(らでん)細工の施された(こうがい)のような(かんざし)で黒髪をポニーテールに結い上げた、市媛の。
 無論、二人分を。黒いポリエステル製の薄手の夏用学ランの肩口には、パン屑がポロポロと降ってきている。雲脂(フケ)のようなので、心底勘弁して欲しい。


 しかも、それを微笑ましく見られながら、だ。相変わらず、市媛の『魔術』というか『妖魅』により、周りからは『仲良し兄妹』と見られている。一種の、公開処刑の気分だ。


「あ、おはようございます、嚆矢先輩、織田先輩」
「おはようございますですの」
「あ、おはよう飾利ちゃん、黒子ちゃん」
「うむ! 苦しゅうない、大儀である」


 そこに行き合った飾利と黒子も勿論、『兄妹』として疑わない。『織田さん』等と、苗字が違う事も知っているのに。


「相変わらず、仲がお宜しいことですわね」
呵呵(かっか)、妬くでない。(わらわ)は別に、男でも女でもイケるぞ?」
「何の話ですの、何の!」
「勿論、『ナニ』の話じゃのう。呵呵呵呵(かっかっかっか)!」


 と、黒子からジト目で見られていた市媛が、嚆矢の背から飛び降りた。翻る裲襠(うちかけ)の裾と袖、その下の……嚆矢ですら始めて見た、弐天巌流学園(ぼこう)の女生徒用学生服。
 モダンでシックな、これと言った特徴の無い黒のセーラー服。白いタイで襟には日本の白線、ミニのフレアスカートに海老茶色のストッキングで。卸し立ての革靴を鳴らしながら、からからと豪快に笑いつつ。


「……………………?」


 雲一つ無い快晴の青空を見上げた嚆矢は────燦々と注ぐ直射日光に『今日も暑く長い一日になりそうだ』と。一条棚引く飛行機雲と、抜けるような青色。モノレールの走り抜ける金属音、降り頻る蝉時雨を聞きながら。
 既にぐっしょりと掻かされた汗の不快感と共に亜麻色の髪を掻き上げ、青空を引き裂く幻影のような雲耀(うんよう)を。予感にも似た予兆(きざし)を、その目に見たような気がして。


「よ〜よ〜、兄ちゃん。朝っぱらから見せ付けてくれるねぇ!」
「羨ましいねぇ、俺らにもその幸せ分けてくれるぅ?」
「『一人は皆の為に(ワン・フォー・オール)』って言うだろぉ?」
「だぜぇ、独り占めはイケねぇよなぁ?」
「そ〜そ〜、一対三より六対三の方が余らなくて済むじゃん?」
「兄ちゃんは帰ってシングルプレイでどうぞぉ?」


 目の前に立ちはだかった『如何にも』な風体の六人組の不良男(スキルアウト)達を見て。
 怯えた飾利と男達の存在にすら関心を払わずに扇子で涼んでい
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