§37 古き魔王の狂信者
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あってはならぬこと。にも関わらず覆すのです。師の不始末は弟子の不始末。鷹児、そなた出来る限り協力なさい」
――哀れ陸鷹化は協力を続けることになったのだ。
「これだけ動けば義理は果たした、ってコトでいいや」
彼は恵那の怖い保護者とやりあう気は全く無い。勝てる気が全然しないのだから。あれが生物学上同類とか可笑しいだろう。師父にすがるしかない。折檻されそうではあるが、折檻されたほうが何倍もマシである。
「アァアアア!!」
見れば神祖の巨大な体は崩壊寸前だ。元々冥王との戦いでガタが来ていたのに、今度は狂戦士。よく持ったと思う。――だがそれも限界だ。
「アァアァアアァァ……!!」
奇声を上げる少女の刃が、蛇の顎に深々刺さる。轟音とともに倒れ伏す巨体。
「……さて。頃合いか」
今の音は何処かにいるであろう神殺しにも聞こえたはず。ここへ来るのも時間の問題だ。障らぬ神に祟りなし。
「それではここらでさようなら、っと」
陸鷹化、離脱。
「ほぅ」
死せる従僕をなぎ倒し、神祖をも屈服させる彼女に告げられたのは、災厄の声。
「我が従僕を歯牙にもかけぬどころか、神祖すら討ち果たすとはな。なかなかどうして、捨て置けん」
「――ッ!?」
本能的な恐怖が彼女の歩みを押しとどめる。野生が、絶対的な力の壁を感じ取ったのだ。
「……自我が無い、か。よくもまぁそれでここまでやったものだ」
暴風が、彼女に襲い掛かる。天賦の直感か、回避に動いた少女はしかし間に合わない。
「ぐっ!!」
吹き飛ばされ、巨体にぶつかり止まる。同時に狂戦士化が解けたのか、恵那の自我が戻ってくる。
「うぅ、ったぁ……」
護堂とすれ違ったのだろうか。威厳溢れるその佇まいは戦闘の後とは思えない。――第一、彼の侯爵が戦ってここが平穏無事な訳がない。
「見事な武だな。捨てるには惜しい」
悠然と佇む老侯爵。彼の瞳が怪しく輝く。
「――ッ!?」
おぞましい視線に射抜かれた、そう感じた次の瞬間、恵那の身体を違和感が襲う。
「え、嘘!? 何コレぇ!?」
全身の自由が奪われる。塩に変貌していく己の四肢は、脳からの命令を受け付けない。
「巫女よ、我が戦奴となるが良い」
有無を言わせぬ口調で断言する初老の男。さもありなん。彼の決定は絶対であり、異を唱えることなど許されない。
「くっ……」
天叢雲があれば、塩となっていくこの魔眼にあらがえるのに。
「……この気配。そうか。小僧がいるのか」
歯噛みする恵那を見ていた老王の笑みが、好戦的な笑みに変貌し
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