§37 古き魔王の狂信者
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竹割り。両断された騎士が倒れる瞬間には、別の敵に相対している。これだけ居るのに敵は全て戦士。魔術師が見えないことに疑問を感じつつも思考は後回しにして現状の対処を優先する。
「まずいなぁ」
死せる従僕はヴォバン侯爵の権能だ。つまり、この場には魔王が襲来しているということ。まだ従僕たちは梅雨払いであり、本人は来ていない可能性も高い。だが、だからといって安心は出来ない。そもそも恵那では逆立ちしたところで勝てるような相手ではない。
「黎斗さん呼ぶ……駄目だ。いくら黎斗さんが壊れているっていっても、羅刹の君に勝てるとは思えないしなぁ。草薙さんを呼ぶしかないか」
天気が荒れてきた。普段なら身内が原因だから暢気にしていられるが、今回は事情が別だ。これは本格的にヴォバン侯爵が襲来したか。魔王が動いていることがわかった以上、申し訳ないが幹彦に構っている余裕はない。
「あ、王様!?」
護堂に連絡を取ろうとした瞬間に本人から電話が入る。ナイスタイミングだ。
「清秋院、そっちは大丈夫か!?」
「よくこっちが大変だってわかったね王様!」
電話を左手に、剣を右手に。通話しながらも攻撃の手は緩めない。
「甘粕さんから連絡でそっちと連絡が途絶したって聞いたんだ。ついでにヴォバンの爺さんが再来していることも。俺を呼べ!」
「えぇ!? 何を言ってるの王様」
「いいから呼んでくれ!! 俺を信じろ!!」
説明している余裕は残念ながら無い。恵那もそれを感じ取ったのか、詮索することなく護堂に対して呼びかける。
「羅刹の君よ。我の下に降臨召されよ。我に加護を与えたまえ……!!」
一陣の風が、吹く。目をつぶり祈る恵那の前に護堂が現れる。
「え!? えぇ!?」
なんとなく展開は予想出来ていたが実際にやられてしまえばそれでも驚いてしまう。
「清秋院悪い、援護を頼む!!」
既にリリアナが飛翔術でエリカを連れてこちらに向かって飛んでいる。だが彼女達が到着するまでぼうっとしているわけにはいかない。
「りょーかいっ!!」
恵那が大太刀を振りかぶる。一閃。それだけで、眼前の騎士達は砕け散る。
「はあっ!!」
流れるように、護堂を囲む従僕を切り裂き、境内への道筋を作り出す。
「行って、王様!!」
己が役は、露払い。
「悪い、清秋院!!」
走る護堂もまた、己が役を理解している。黎斗が居ない今、彼の狂王を止められるのは自分だけなのだから――
「はぁッ!!」
激しさを増す斬撃は、死霊をもものともせず、なみいる敵をなぎ倒す。恵那の攻撃、洗練されたその一撃は聖騎士達にも匹敵する。だが、まだ足りない。
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