暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ≪黒死病の叙事詩≫
≪アインクラッド篇≫
第三十三層 ゼンマイを孕んだ魔女
秋風のコガネ色 その弐
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とを考えると地下からの反応の可能性も否めないが、しかしどう考えてもその木は周囲の細い木々の純粋な紅葉(こうよう)から浮いている。確かに怪しい。

「ほほう、では俺が調べてみようかな」

 大木に近づいてコンコンと無意味に叩く。思ったとおりコンコンと鳴った。しばらくそれを繰り返しわざとらしげに大木を体重を乗せたタックルで揺らしてみる。

 普通の手応えのあと、普通にぐらぐらと木は揺れ、幾つかの緑の葉が落ちてきた。と、視認した瞬間。

「わわぁぁああっ!」

 頭の上からの唐突な甲高い悲鳴と、直後に訪れた肩へのハンマーで叩かれたかのような鈍痛。

「さこつがァッ!?」

 自分の喉から出た奇妙な悲鳴を聞きながら俺は落下物と共に倒れ伏したのだった。

「痛い! 痛いぞ! くそ! こんなんなら≪骨格≫なんて取るんじゃなかった!」

 俺はゴロゴロと転げまわり、体の骨にひびが入ったかのような感覚に悶絶(もんぜつ)していた。痛みが治まってきた頃に、俺同様に地面に転がっている落下物に目を遣ると、それは金色の、噂通りの身なりの少女だった。頭を地面に突っ伏していることから察するに頭を打ったのだろう。目をうずまきにしてくるくる回している。こんな状態のNPCは見たこと無いが推測するに『コミカルな気を失った状態』だろう。ややアイが心配そうに、手を差し出しながら苦笑いで俺に話しかけてくる。

「例のNPCね、魔法少女」
「魔法だけでなく体術もできるようだ。ヒップドロップに限るが」

 はて≪体術スキル≫にヒップドロップなるソードスキルはあっただろうか。まぁないだろうが俺のHPが僅かに減ってることから危険視はしといたほうが良いだろう。そんな些事(さじ)を考えているとヒースクリフが声をかけてきた。

「スバルくん、まさか君は≪軽業(アクロバティック)≫スキルで≪骨格≫のModを取っているのか?」
「ああそうだよ」

 骨格機能とは、≪謎MOD(モッド)四天王≫のひとつである。中身が均一の質量である架空体に骨格を模した芯を内蔵させる機能で、利点としては防御力と機動力が上昇するのと部位切断防止が付与されるが、これまた欠点も多い。衝撃を受けた際に骨が振動すること、そしてなによりも小さいながらも痛覚が発生するのだ。

 以前に腕を切り落としてくるタイプのモンスターと戦ったとき、腕の骨のおかげで切断こそ免れたが、痛くてその場に転げまわったことがある。一分間痛みに声を殺して我慢していたのだが、もしあの時アイが居なければ割と命の危機だっただろう。痛みこそ大したものではないのだが、普段は痛みとは無縁の生活をしているせいで免疫がないのだ。誰だってゲーム中に痛みが走ったらポーズボタンを押すものである。プロとて例外ではない。

 しかし頭痛なら
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