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運命の向こう側
1話
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のであり。
 自分のだらしなさを思い出した士郎は、ただただうなだれるしかなかった。



 ○●○●○●



 その瞬間は、魔法使い達にとって人生で一番緊張した瞬間と言ってよかっただろう。新任の魔術師を受け入れるのに、顔見せにそれなりの人数用意しておかなければならない。それを知っていても、多くの人間が近右衛門を恨んだ筈だ。気持ちは分かるが、どうにもならない問題だった。
 誰もが人知れず拳を握り、扉が開かれない事を願った。それは、近衛近右衛門すらも例外ではない。しかし、願いとは現実に反するからこそ願いでしかないのであり。扉は、いともあっけなく開かれた。
 先頭に立って案内していたのは、桜咲刹那だ。彼女の様子には、全く気負いというものが見えない。そうでなくては困る。だからこそ、関東魔法協会に所属していながら、非魔法使いの彼女を任命したのだから。
 彼女に続く人影も、小さなものだった。金色の髪を上げて結った、恐ろしく「真っ直ぐ」な印象を受ける少女。そして、近右衛門から見ても隙の見えない立ち振る舞い。外見こそ刹那とそう変わらぬ年頃に見える。だが、それで侮るような者はこの場に誰もいない。衛宮士郎の従者である、その一点だけを取っても、異常に過ぎるのだ。ましてや、彼の『不死者殺し』が必ず戦場に連れて行く相棒ともなれば――たった一人で、この場の半数を討ち取れてもおかしくない。
 次に入ってきたのは、今、魔法使いが最も恐れる男。魔術協会の切り札、衛宮士郎だった。高い身長に引き締まった体は、それだけで威圧的。ましてや、顔から微笑がない――つまり、魔術師としてこの場に立っている――ともなれば、それだけで部屋に怯えた空気が作られる。良くない兆候だ。分かってはいたが、何ともできない。なぜならば、近衛近右衛門ですら、彼がこの場にいると言うだけで恐れを感じていたのだから。
 恐れた理由は、彼の姿を確認したから、だけではない。衛宮士郎という希代の魔術師から、一切の魔力が感じられなかった。魔術と魔法、その両者は今や、共通するプロセスを探す方が難しい。しかし大前提として、世界の生命力、つまりマナを利用するのは変わらないのだ。それを感知できないというのは、控えめに言っても、実力の桁が違う。

「魔術協会派遣、監督魔術師です。よろしくお願いします」
「うむ、よく来て下さった。こちらこ……」

 挨拶をしたのは、衛宮士郎ではなく、衛宮アルトリア(魔術協会での通名はセイバー)だった。彼は少女の隣より一歩下がった位置に立っている。つまり、この度の挨拶を担当するのは、彼女だという事なのだろう。安堵に空気が僅かに緩み……すぐに、今まで以上に緊張したものになる。
 最後に入ってきた、三人目の魔術師。すらっとした体をダークスーツで纏った、男装の麗人。よく知た、という程で
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