1話
[5/18]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
言うという選択を選んだ。あまり誉められた行為では無いのだが、嘘はもうこりごりだった。
余談だが、管理費は完全に魔術協会持ちであり、士郎の支出はゼロである。
「なーんだ。お金持ちだったらおごってもらおうと思ったのに」
「はは、正直だね。……俺としてはもうちょっと隠してくれると嬉しいんだけどね」
「ほんと? 隠したらおごってくれる?」
「全く、仕方がないな。今度おごるから、もうちょっとおとなしくしてくれ」
「わーい、やったー! 約束だかんね、忘れないかんね!」
その場で軽く飛び跳ねて、全身で喜びを表現する少女。まあ、実際の所。ここまで喜ばれるのであれば、悪い気はしなかった。
「あ、でも一軒家で一人とか寂しくない?」
「ん? 一人じゃないぞ」
「なぬ、もしかして結婚してる!? どんな人なの? 出会いはどうでしたか!?」
ただでさえ高かったテンションが、天井知らずに上がる。ぐっと握って突き出してきた手は、たぶんマイクのつもりなのだろう。瞳の輝き方も、先ほどの比ではない。女の子が噂と恋愛話を好きなのは、どうやら麻帆良も変わらないらしい。幾度も晒された事がある勢いだが、未だに慣れなかった。おかげで動揺だけはしなくなったのだが……あまり喜べる話ではない。
口元の手をさりげなくどけて、努めて平常の雰囲気を作り出して言う。
「残念ながら妹だよ。寮一つだと狭いし、二人でそれぞれ寮に入るのはもったいないからな」
「むむむ、またもや空振りだ。せっかく面白い話ゲット! だと思ったのに」
ちなみに、当然のことながら――驚くべき事に、妹とはセイバーの事だ。ちゃんと戸籍も存在し、士郎と同じく切嗣の養子で、衛宮アルトリアという名前になっている。当然、士郎にそんなツテはないので、凛にやってもらったのだが。そのときの彼女が妙に楽しそうだったのが印象的だった。曰く、札束のビンタがこれほど楽しいとは思わなかった、らしい。……変なことに目覚められ、ちょっと泣きそうになったのは秘密だ。
セイバーは自分が姉であると主張したのだが、それは通らなかった。当時士郎が急成長し始めたのと、サーヴァントは成長せず、ごまかしが難しいからだ。とても不満そうであり――それを質が悪いの(凛とイリヤとカレン)にからかわれて、さらに機嫌を悪くしていた。
「まあいいや。麻帆良の案内とか必要だったら、私に言ってくれていいわよん。ふふふ、麻帆良の事なら隅々まで知ってるからね!」
「頼もしいな。じゃあ、その時はお願いするよ」
ぴっと、あごに指を当てて格好つけて(いるつもりなのだろう)、宣言する。
決め顔のまま、彼女の視線がふと浮つく。視線を追ってみると、あるのは時計だった。
「わお、もうこんな時間。おとーさん待ってるから、もう行かなきゃ!」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ